なかなか史を独占できない洋子
顔を赤くした洋子に対して
まず奈津美
「あの、洋子さん、何だかんだといって、史君を独占できてうれしいんでしょ?」
結衣
「ドサクサにまぎれて、それはどうなんでしょうね・・・」
彩
「決してフラチなことは認めません」
・・・とにかく三人とも、ムッとした顔を変えない。
それには洋子も焦った。
確かに図星だったから。
洋子も何とか、誤魔化そうとする。
「あのね、あくまでも、史君の本音を聞いて、私なりのアドバイスをね」
「なかなか時間もかかると思うからさ」
「ねえ、わかるでしょ?イタリアの話もフランスの話も長くなるしね」
「あっちの生活とかさ、リスクも言わないとね」
洋子もなかなか必死である。
それを聞いた奈津美
「でも、それにしては顔が赤い」
結衣
「うん、さっきから急に顔が明るくなった」
彩
「どうせ夜なら、ここの店でもいいんですよね」
結局、洋子について「ヤッカミ」を言いたいだけかもしれない。
オサレ気味の洋子は
「うーん・・・とにかく、史君とお話してみる」
「史君だって、都合があるからね」
「店が終わったら連絡するかな」
と言うけれど、
奈津美
「別に今でもねえ・・・」
結衣
「なんかアヤシイ」
彩
「このリスクは洋子さんのほうが高い」
と、三人とも、なかなか納得しない。
こうなっては洋子も仕方がなかった。
三人の前で史に電話をかけることになってしまったのである。
洋子
「史君、あのね」
と話しかけると、
史からは
「ああ、姉から聞いています」
「何か、ご心配かけてしまったみたいで、ごめんなさい」
と、謝ってくる。
洋子は
「うん、由紀ちゃんが、かなり心配していたからね」
と、三人を見回すように「あくまでも由紀からのお願い」を強調する。
しかし、史からの言葉は、ちょっと意外だった。
「ああ、でも、留学なんてまだ先なので」
「すぐに洋子さんにお話をしていただけるなんて、恐縮過ぎます」
「お聞きしたいのは本当なんですが、留学そのものが、まだ当分先です」
「そもそも、大学にも合格していません」
「ですから、姉が変なことを言って申し訳ないです」
・・・要するに「デートは遠慮」らしい。
洋子は、寂しくなってしまった。
このままキャンセルされれば、ガッカリして夜も眠れなくなるかもしれないと思った。
そして結局強引だった。
「あのね、史君、それはいいけれど、由紀ちゃんと約束しちゃったの」
「だから、そんな難しい話ではなくて、一般的な話だから」
「いい?たまにはさ!」
史も洋子の気持を察したようだ。
それにキャンセルして、また由紀に怒られるのも嫌だった。
「あ、はい、それでは楽しくお話しましょう」
「お店はお任せします」
と、承諾したのである。
洋子は、実は、もう一言加えようと思っていた。
「もしかすると奈津美ちゃん、結衣ちゃん、彩ちゃんも」
だったけれど、結局、史の「承諾で」うれしくなって言い忘れてしまった。
奈津美、結衣、彩のムッとした顔は、そのままだったけれど、三人でヒソヒソと相談した。
「ふん、押しかけてやる!」奈津美
「洋子さんに独占させない」結衣
「リスク未然防止の観点もある」彩
ということで、なかなか史を独占できない洋子である。




