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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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由紀の落胆

母美智子は、首を傾げた。

そもそも、由紀の次の怒りがよくわからない。

「一体何?何があるの?」

と由紀に声をかける。


すると由紀、待ってましたとばかりに

「あのね、このアホの史がね」

「加奈子ちゃんと愛華ちゃんに、とんでもないことを言ったの」

「ほんと!あっきれる!」

と、言うけれど、それでは中身がわからない。


美智子は

「だから、何なの?」

と、また聞き直す。


由紀は、ようやく

「このアホの史がね」

「音楽の道には進まない」

「うん、それは、ひ弱な史だから、競争激しい音楽なんて無理なのはよくわかる」

由紀は、ウンウンと自分でいって頷くけれど、史はムッとした顔になっている。


由紀は言葉を続けた。

「それで、父さんみたいな源氏とか古文の道にも進まず」

「京都の家に行けば、いくらでも本があるのに、何ら考慮もせず」

そこまで言って史を、グッと睨む。

史は、ますますムッとした顔。


美智子が、結局焦れて

「ねえ、だから何なの?」

「さっさと結論を言いなさい」

と急かすと、史が答えた。


史は、少し緊張気味に話した。

「音楽とか古文じゃなくて、西洋中世史をやりたい」

「興味がある人が多いから」

「カトリーヌ・ド・メディシスとか、マキャベリとか」

「それで、イタリア語、ラテン語、フランス語、ドイツ語、トルコ語とか勉強して、その後はヨーロッパの大学に留学したい」


その史の話を聞いた由紀

「このアホ!」

「史みたいな、ひ弱な子が、どうしてヨーロッパで暮らせるの?」

「風邪を引いても助けてくれる人がいないんだよ?」

「日本より治安も悪いかもしれない」

「食事だって合わないかもしれない」

「それに、史が日本からいなくなったら、里奈ちゃんどうするの?」

「愛華ちゃんも泣くよ」

「マスターだって、涼子さんだって、洋子さんだってさ、みんな泣くよ」

「不安でしょうがないじゃない!」

・・・・とにかく、ずっと文句を言っている。

そして、そこまで言えば、由紀としては母美智子も、史を叱ると思った。


・・・が・・・しかし・・・


美智子は、ニコニコ笑っている。

そして、由紀の期待とは全然違う反応になった。


美智子の目が、輝いてしまったのである。

「へーー!面白い!」

「私も一緒に行きたい!」

「イタリアのお菓子、料理」

「フランスのお菓子、料理」

「ドイツかあ・・・お菓子も料理も、面白いかなあ」

「それに何より、トルコのお菓子と料理も興味ある!」

「史、面白いかも」

・・・叱るどころではない、母美智子まで行きたいとまで言い出したのである。


史は「え?」とキョトン状態。


由紀は落胆状態。

「やはり・・・この母美智子もアホだった」

「どうして、この話で料理人の世界探訪に入るのかなあ・・・」


夕飯は美智子が「どうしても」と言い張り、地中海風パエリャになった。

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