由紀のお叱り
史は新幹線車内では、疲れのせいなのか、ほぼ熟睡。
降りる駅の品川駅近くで、ようやく目覚めた。
品川駅で降りてJR、京王井の頭線経由で家に帰った。
家に入ると、母美智子が玄関まで出てきた。
美智子
「ああ、史、お疲れ様」
「あちこちから、お褒めの電話があったよ」
「私もホッとしたよ」
と、ご機嫌な様子。
史は
「うん、愛華さんのお屋敷で、モーツァルトを弾いてね」
「それで雅仁さんって人から、こんなお礼をもらってしまって」
と、少し心配になってしまった「高額なお礼」を封筒ごと、美智子に渡す。
美智子も、封筒を開けて、少し驚いた顔をするけれど、
「ああ、史、気にしないでいいよ」
「雅仁さんのお気持ちだから、そのまま受け取って」
「そもそも、父さんと孝叔父さんと雅仁さんとで決めたお礼の中身らしいの」
「それでも私と父さんからも、お礼を言っておきます」
と言ってくれたので、史はホッとした。
史
「いろいろご馳走になってしまって」
それも報告する。
美智子は、うんうんと頷き
「ああ、それも全部連絡あって、お礼もしておきました」
「史の演奏にも感激していたから、史は心配することはないよ」
と、ここでもキッパリ。
史の顔が、ようやくサッパリしてきた。
そして史はおもむろに
「ところでさ、母さん、僕は愛華さんのお屋敷って行ったことあるの?」
何しろ、史は全く記憶がなく、愛華が自分のことを覚えていたことが、不思議だった。
美智子
「ああ、行ったかなあ、雅仁さんのお屋敷でしょ?史が三歳ぐらいの時にね、お正月に京都に行って、その時にお年始したかも」
「で、それがどうかしたの?」
と、不思議そうな顔をする。
史が
「へーーーーそうなんだ」
と首を傾げていると
その時、二階から由紀が降りてきた。
その顔は、怒り顔。
そしてリビングに到着すると、やはり怒った。
由紀
「このアホ!愛華ちゃんのこと、どうするの!」
「加奈子ちゃんから長電話!」
「加奈子ちゃんが言うのには、愛華ちゃんは本気なんだって!」
「その後、愛華ちゃんからも涙声で電話!」
「もーーー!」
「どう答えていいのかわからない!」
史は
「そんなことを言われても・・・」
となり
美智子は
「え?何のこと?」
キョトン状態である。




