史の京都散歩(19)
史が少し難しい顔になったので、愛華は心配になる。
愛華
「なあ、史君、難しい顔せんと、何でも聞いてあげる」
加奈子も察した。
「由紀ちゃんに文句言われるんか?気にせんでええって、由紀ちゃんは言い過ぎや、ほんま史君の文句ばかりや」
そこまで言われて史は「姉貴のやつ・・・加奈子ちゃんにも僕の文句を言ったのかな」と思ったけれど
「学部としては文学部なんだけど」
とまで話して一呼吸
「西洋史をやりたくて」
とポツリ。
それを聞いた愛華は
「え?なんでや?」
加奈子も
「それは・・・違うやない?史君」
「そういう御家柄じゃないと思うけどな」
何でも聞くと言いながら、二人とも「史の西洋史」には違和感があるようだ。
史は、またポツリ。
目の前の二人の違和感など、考えない。
「そして、それをやるとなると、英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、ラテン語も勉強が必要となる」
「そして、行くとるとヨーロッパ全体は当然として、トルコにも行くことになる」
愛華は、史のそんな話を聞いていて最初は違和感を覚えたようだけど、少しずつ頷くようになった。
「そうやなあ、面白いかもしれんし、やりがいもあるかなあ」
加奈子も、考えた。
「まあ、そんな話を由紀ちゃんには言えんなあ・・・何しろ文句ばっかりや」
「大旦那も難しい顔するかなあ・・・というより寂しがって不安になる」
愛華と加奈子も難しい顔になってしまったので、史は少し焦った。
史
「ああ、留学は語学がしっかりしてからだよ」
「その前に、二、三年勉強しないと無理」
と、少し笑った。
愛華は、史に尋ねた。
「なあ、史君、西洋史といっても、トルコが出て来るゆうことは」
「もしかして中世なの?」
史は頷く。
「うん、興味がある女性もいるから、どうしても」
加奈子が不思議な顔を史を見る。
「興味がある女性って?」
と声をかけると
史
「うん、カトリーヌ・ド・メディシスに興味がある」
と、ようやく本音にたどり着く。
愛華
「そうかあ・・・複雑な人やねえ・・・」
「ある意味、すごい人や」
「いやーーー面白いなあ」
愛華も笑った。
ところが加奈子
「誰だっけ・・・その人・・・」
と首を傾げる。
史が愛華の顔を見た。
それでも少し説明をする。
「フィレンツェのメディチ家出身でフランス王妃になって、宗教革命に巻き込まれて・・・」
「うーん・・・ここでは説明しきれない人」
愛華は、史の心がわかったらしい。
「じゃあ、お食事の場所でね」
クスッと加奈子を見て笑う。
ということで、三人は昼食場所のホテルに向かうことになった。




