史の京都散歩(10)
愛華のお屋敷も、さすが旧宮家、由緒正しさや豪華さ、広さで、とにかく立派である。
史は、ここでもキチンと愛華のご両親にご挨拶。
「史です、今夜はよろしくお願いします」
と、頭を下げると
まず、愛華の父親の雅仁
「ああ、これはこれは、大旦那のお孫はん?いやーーー晃さんに、よう似とるなあ」
「いやいや、こちらで無理言うて、わざわざ東京から来てもらったんや、そないに頭を下げんと・・・」
と、少し慌てている。
そして愛華の母の良子は
「あらぁ・・・この坊ちゃまが、噂の史君?」
「まあ、可愛いわぁ・・・うれしいなあ・・」
「この寒いのに、はるばる東京から」
「ささ、はよう・・・愛華、ご案内して」
そう言いながら、史を見る目は、うっとりとなっている。
そこまでの話になって、愛華は
「なあ、史君、うれしいなあ」
と言いながら、スッと史の手を握る。
史は内心
「え・・・また?」
と思うけれど、ここでジタバタもできない。
後ろで加奈子、孝や彰子、圭子が見ているので、変な抵抗も無理。
しかたなく
「はい・・・わかりました」
と素直に、愛華の手を握り直す。
そして愛華が歩きだすので、史は「案内される立場」、シズシズと演奏する場所に歩くことになった。
さて、さすがに旧宮家、40人から50人くらい入りそうな立派なホールがある。
そして、そのホールの奥の壁の前にはグランドピアノと譜面台。
それを見て、史もようやく落ち着いた。
ピアノに向かって座れば、後は演奏に専念すればいい。
それ以外は、パーティーの内容などは、史自身には全く関係がないと思った。
そして、落ち着いた史は、加奈子に声をかける。
史
「もう一回合わせようか?」
加奈子は
「うーん・・・少しだけかな」
「あまりできない」
「時間も迫っているから」
その言葉に史は、聞き返す。
「何時からなの?ところで」
さすが、オットリ史である。
肝心なことを聞いていない。
加奈子は
「えっとね、5時からだから、あと15分」
「もう、入ってくる人がいるかも」
それを聞いた史
「え?マジ?」
と立ち上がると、やはり加奈子の言うとおり、数人の客が入ってきている。




