史の京都散歩(1)
京都の加奈子から、史に電話がかかってきた。
加奈子は、大旦那の孫娘、だから由紀や史と従姉妹になる。
加奈子の話は
「史君、突然で悪いけれど、土日で京都に来て欲しいの」
ということ。
史は
「え?僕だけ?」
と聞き返すと
加奈子
「うん、由紀ちゃん、風邪気味でしょ?」
「それにお願いしたいのは史君だから」
それを聞いた史
「うーん・・・特に大丈夫だけど」
「父と母にも言わないと」
と返すけれど、大事な要件を聞かなければならない。
史
「ところでお願いって何?」
そういうところが、史は時々「おっとり」である。
加奈子は
「うん、ピアノを弾いて欲しいの」
「人の集まりがあって、私がヴァイオリンを弾くことになったんだけど」
「ピアノを弾く人と、どうしても波長が合わないの」
「史君なら、思い通りの演奏ができるから」
・・・・・
加奈子のお願いが、長々と続いた。
史は
「ああ、そういうことなら」
「でも、スーツとか持っていくのかな」
演奏をする場所も気になった。
加奈子は
「うん、一応持ってきて」
「じゃあ、期待してる!」
「京都駅まで迎えに行くね」
時間まで指定して、電話は終わった。
その後、史は、まず由紀に、その旨の話をする。
史
「加奈子ちゃんが、頼んできたから行ってくる」
由紀
「あのさ、コンサート前でしょ?」
「京都は寒いよ」
「風邪引いたらどうするの?」
で、ちょっと文句顔。
史が一人で京都に行くことと、加奈子に誘われなかった「ヤッカミ」がある。
母美智子は
「ああ、じゃあ、ついでに孝叔父さんにお礼して来なさい」
「芸能スカウトの件で、ご迷惑かけたんだから」
で、簡単に了承。
父晃も
「ああ、母さんの言うとおり、楽しんできなさい」
と、超アッサリ了承。
ということで、史は土日に京都に行くことになった。




