牡蠣の土手鍋
史が、家のキッチンで何か作っている。
どうやら土鍋に何かを入れている。
母美智子が手伝っているけれど、由紀は入れない。
入ろうとすると
美智子
「まだ寝てなさい」
史にいたっては
「作業の邪魔」
本当に素っ気ない。
由紀は
「ふんだ!仲間はずれだ、部屋で泣いてやる」
と思ったけれど、おそらく病み上がりの自分を心配していると思ったから、すんなりと部屋に。
さて史は
「えーっと味噌は八丁味噌にしよう」
「味が濃いけど、滋養強壮だから」
で、土鍋のふちの上部に、八丁味噌をしっかりと、塗る。
美智子は
「さて、水と昆布、そして野菜を入れて、グツグツと煮る」
「野菜は産直市から」
味噌が溶けはじめて来た。
野菜にも八丁味噌の味が染み込んでいく感じ。
史
「うん、独特のいい香り」
美智子
「由紀は感づいたな」
「いい香りだもの」
二階の由紀を思いやる。
史
「そろそろ牡蠣をいれよう」
美智子
「そうだね、頃合いかも」
「由紀を呼ぶ?」
と言ったところで、由紀が二階から降りてきた。
おそらく待ちきれなかったらしい。
由紀
「わーーー!美味しそう!」
「牡蠣の土手鍋!大好物!」
とにかく大はしゃぎ。
そして、やはり美味しかったようだ。
減っていた食欲もかなり、戻っている。
史
「最後はどうする?」
と聞いてくるので
由紀
「雑炊風にしたい」
と言うと
美智子
「卵を落とすかな」
で、「牡蠣の土手鍋雑炊、卵とじ」になった。
由紀の体力回復には、効果抜群である。
由紀としては、本当にうれしかった。
とにかく「家族っていいなあ」と思った。
そして、その日も、ぐっすりと眠ったのである。




