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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
271/760

珍しい客(1)

夜八時、カフェ・ルミエールに、中年男性が一人入ってきた。


見るからに上品な雰囲気を漂わせている。




まずマスターが気づき、美智子に目配せ。


美智子も驚いた顔になる。




「あ!孝さん!京都からですか?」


美智子は、カウンターを出て、深くお辞儀をする。


不思議そうな顔をする美幸にマスターが事情を話す。




「ああ、孝さんね、大旦那のご長男。だから晃さんの兄さん」


「都銀でもかなりな地位にいる人」


「将来は、大旦那の家を継ぐ、いや今は実際継いでいるも同じ」




美幸も、少しかしこまっている。




さて、孝はカウンターの前に座った。


そしてにこやかに


「ああ、マスター、お久しぶり」


と、マスターとしっかり握手。




美智子もカウンターの中に入った。




マスター


「ボルドーにします?」


とクスッと笑う。


しかし孝は


「いや、トワイスアップ」


とクスリと返す。


美智子も、クスッと笑う。




マスター


「そうだよね、技術を見せるのはトワイスアップ」


「それも実は孝さんに教わった」


と言って、美智子と美幸にニヤッと笑う。




美智子と美幸は


「ほーーーーっ」


という顔になるけれど




孝の言葉が続いた。


「そうだよね、あれはマスターが高校生の頃」


「厳しい親父のスキをついてさ」




美智子


「え?・・・この二人・・・」


となって


美幸


「そうかあ、マスターは高校生から飲酒かあ・・・やはり・・・」


と、妙なところで感心している。




それでも、美智子は気になった。


「あの、その時、晃さんはいたの?」




すると孝


「あーーーいなかった」


「あいつは、時々、カタブツなんだ」


マスター


「うんうん、そういうところがある」


「だから安心していい」


と、しっかり頷く。




美智子は、ホッとしたような、笑いを浮かべる。


その美智子の顔を見て





「プッ」


マスター


「何も言えない」


と口を押さえている。




美智子は何となく感づいた。


「この二人と若い時の晃さん・・・」


「それに大旦那か・・・」




そんなことを思っていると、カフェ・ルミエールの扉が開いた。


そして、晃も入ってきた。

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