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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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無礼な客(2)

しかし国会議員二人はそれでも収まらない。


「何だと?この平民風情が!」

「お前の牛乳?ふざけんじゃねえぞ!土臭い百姓のくせに!」

「おれたちは政府を追及する国会議員だぞ!」

「お前らみたいな百姓に下げる頭なんか持ってないんだよ!」

「いいか!俺たちに逆らえば、こんなチンケな店、いつでも潰せるんだぜ!」

「おい!マスター!それから、そこの百姓二人!土下座して謝れ!」


とにかく暴言の限りを尽くし、わめきたてる。


「そういうことならば・・・」

マスターは呆れた。

そしてカウンターの下で何かを操作しているが、国会議員二人は気づかない様子。


「土下座とか、何とか言う前に・・・」

国会議員二人に罵倒されていた農家二人は、カフェ・ルミエールの扉が開くのを見た。

地域の住民たちだろうか、40人から50人くらいが入って来た。

そして、国会議員二人を取り囲む。


「おい!お前ら!」

取り囲んだ人々の中から、一人の年輩の男が出てきた。

その男の顔を見て、国会議員二人の顔が少しひるむ。


「このカフェ・ルミエールで悪態の限りをやったそうだな!」

「おい!みっともねえことしやがって!」

「俺とマスターとはな!若い頃からの付き合いだ!」

「それから、お前が百姓フゼイと馬鹿にしたこの若月さんと深田さんの二人ともな!」


「・・・地域後援会長の吉川さん・・・」

「それから地域後援会の皆さま」

「いや・・・そんな付き合いとは知らず・・・」

国会議員二人の顔は真っ青に変化した。

しかし、その返事は、ますます怒りを増幅したようである。


「何だと地域後援会長だと?」

「お前は後援会長だから頭を下げるのか!」

「後援会長の付き合いと知ったから、頭を下げるのか!」

「国民の税金で食っている国会議員だろうが!」

「全ての国民の幸福を考えなければならないお前たちだろうが!」

「それを何だ!丹精こめて育てた牛からの牛乳をマスターの顔にかけ!」

「グラスを叩きつけて割る!」

「その上、土下座だと!脅しまでかけて!国会議員の前に、お前らは人間として失格だ!」

「いいか!お前たちは絶対推薦しない!運動もしない!」

「恥をかかせやがって!」

どうやら、国会議員二人を怒鳴りつける男は、当の国会議員の地域後援会長らしい。


その地域後援会長が怒鳴っている最中、警察官もカフェ・ルミエールに入って来た。

マスターの顔にかかりっぱなしの牛乳や、床に残った割れたグラスと牛乳を確認。

そして涼子が「問題の現場動画」を警察官に見せている。

また、他にマスコミ数社、地域テレビ局も入って来た。



国会議員二人は、店に残ることはできなかった。

そして、そのまま、うなだれて、警察官と姿を消した。



「ああ、ありがとうございます」

マスターは顔にかかった牛乳を拭き、カウンターの前に座った地域後援会長の前に水割りを置いた。

農家二人もカウンターの前で同席した。


「いやいや、本当に申し訳なかった」

吉川地域後援会長は、ガッカリしている様子。

「いや、あんたが悪いんじゃないけどさ」

農家の一人若月もガッカリのようだ。

「ああ、丹精込めて育てた牛が馬鹿にされたようでね」

農家のもう一人の深田も肩を落としている。



「国会議員で、野党だから政府を追及できる、追求できるから自分たちが偉いと勘違いする、その典型ですね」

マスターも渋い顔のままである。

「そんな偉い人が、支えてもらっている国民の善意を踏みにじるようなことを」

「あんな奴らを国会議員にしたのは、俺の責任だ」

「マスターには俺から謝るよ、あいつら最後までマスターには謝らなかった」

吉川地域後援会長は深いため息をつく。


「ああ、おれたちにも」若月

「おれたちだけじゃなくてさ、他の店の客にも謝らなかった」深田


「根が深そうですね」

涼子も難しい顔になる。



国会議員二人の言動は、マスコミにも頻繁に報道された。

政党幹部は謝罪したものの、本人たちからのキチンとした謝罪は、ない。


理由としては、次回選挙での推薦や公認取り消しが確定となったためらしい。


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