VS芸能スカウト(11)
さて、J芸能プロダクションのスカウト杉本は、今日も学園の周りや史の家の周囲を車でうろついた後、史の家の近くに車を停め、歩き回っている。
しかし、いつもの雰囲気と微妙に異なる。
その違いと言うのは、まず人が歩いていない。
暇つぶしに聞き込みをしようと、チャイムを押しても、どこの家からも返事がない。
仕方ないので、車に戻ってまた校門前で警備員を「茶化そう」と思った。
しかし、その車に戻ったところで、まず驚いた。
杉本
「げ・・・駐車違反・・・」
しっかりステッカーが貼ってある。
杉本は怒った。
「誰だ!通報しやがったな?」
「どこのどいつだ!」
怒りのあまり、停車した車の周りの塀とか玄関を蹴飛ばして歩く。
玄関のガラス戸が割れた家もあった。
「へ!どうせ留守だ!ふざけんじゃねえ!」
怒りは、それだけでは収まらなかった。
車の中の、食べたゴミ、空き缶、空きペットボトル、タバコの吸い殻まで周囲全体にぶちまけた。
「はあ!車の中がきれいになったぜ!」
杉本としては、そこまでしないと気が済まなかった。
杉本
「さて、またあの警備員の仏頂面でもからかうかな」
そう思って、また車に乗り込むのだが・・・・
そこで異変が発生した。
杉本の後方から、「ピィーーーー!」警笛が鳴らされた。
杉本が
「へ?」
と思わず振り向くと、目に入ったのは、まず警察官二名、そして数多くの「おそらく地域の住民」、なかにはビデオカメラで撮影しているものもいる。
警察官二人が歩み寄ってきた。
そして、まず若手の警察官
「J芸能プロダクションのスカウトの杉本だな」
「駐車違反、器物損壊、ゴミの不法投棄」
「全て現行犯、全て見ていたし、録画した」
おそらくその上司らしい警察官
「署に来てもらうことになる」
「職務上の話でもあるので、お前の社にも連絡をする」
杉本は、真っ青になりガタガタと震え上がっているが、このように「現場」を見られてしまっては仕方がない。
結局、肩を落とし、警察に連行されてしまった。
その後ろ姿を見ている橋本自治会長
「大旦那とマスターの作戦通り」
大石産直市会長
「とりあえずあのスカウトはこれなくなるな」
少しホッとした様子。
集まってきた近所の人たちも、
「ああ、嫌だった」
「玄関壊された、損害賠償を請求しないと」
「ああ、迷惑料含めてタップリ請求しよう、何と言っても物的証拠は明確、多数」
「ああいう芸能プロダクションって人気商売だし、響くだろうね」
・・・・
様々な話で盛り上がっている。
その後、橋本自治会長と大石産直市会長は、カフェ・ルミエールに寄って状況報告をすることになった。




