VS芸能スカウト(6)
「万が一もあるから」という意味で、校長は今日の史のカフェ・ルミエール楽団の練習場までの道を、柔道部顧問の佐野と三輪担任を付き添わせた。
校長自身は、副校長を伴い、地域の警察に監視カメラによる録画ビデオを所持し、出向いた。
そして、問題のビデオを再生しながら、説明等をする。
校長
「少し前から尾行などをされているようで、今日もビデオにあるように腕を掴まれかけました」
「私も生徒を預かっている立場なので、心配なのです」
「何か有効な対策はありますか」
慎重な言い方をする。
しかし、相談をかけられた警察の対応が、今ひとつ。
若手の警察官
「尾行をされて、校門で待ち伏せされて腕を掴まれかけたといっても、具体的な被害事実はないですね」
「やはり、何か犯罪事実がないと、警察としては動きようがありません」
おそらく、その若手警察官の上司も苦い顔。
「私たちも、なかなか忙しい身です」
「何かもう少し困ったら、警察に来られたらどうですか」
「そんな一人の学生とか一つの学園のためだけに、警察があるわけではないので」
警察署長も顔を見せた。
「そんなに心配なら、直接芸能プロダクションに連絡されたらどうですか」
「とにかく、そんな程度では警察は動きようがありません」
結局「けんもほろろ」に、警察は「対応は被害があってから」と言い、「相談」も打ち切られてしまった。
校長と副校長は、肩を落とし、カフェ・ルミエールまで向かう。
校長
「ああいう対応だから、ストーカー犯罪とかなくならないのに」
悔しそうな顔をする。
副校長も
「犯罪防止の観点がまるでないですね」
「しつこいことで有名な芸能プロダクション対策を相談したのに、あの態度では」
校長
「やはり警察は弱きに強く、強きに弱いのかなあ」
副校長
「日本人がまじめだから治安も保たれていることを、自分たちが優れていると勘違いしているという批判もありますね」
・・・・・
と、様々文句を言いながら、校長と副校長は、カフェ・ルミエールのビルに到着した。
校長
「やはり、マスターに相談してから練習を見よう」
副校長
「そうですね、そのほうが手っ取り早い」
そう話し合って、校長と副校長は、カフェ・ルミエールに入った。




