vs芸能スカウト(5)
史と柔道部の佐野顧問は校長室に入った。
史の担任の三輪も校長室に呼ばれた。
校長は
「さっきの校門前の経緯をビデオで見てみよう」
と言い、早速ビデオを再生する。
三輪担任
「これは、まるで美佳ちゃんが言っていたけれど、人さらいだね」
佐野顧問
「史君が敏捷だから腕は掴まれなかったけれど、並の運動神経の生徒なら掴まれているよ」
さすが柔道部顧問、杉本スカウトの腕の動きの速さも見ている。
校長
「学生全体の安全と学園の安全を確保するという観点から、今回の経緯については警察当局に通報しようと思う」
「確かに特別の事態が発生したわけではないけれど、危険はある」
その表情が固い。
ただ、史は、少し顔が暗い。
史
「すみません、僕のせいで、こんな騒動になってしまって」
「僕は、騒動ばかりで」
深く頭を下げる。
佐野顧問
「あ、いや、史君は何も悪くない」
三輪担任
「落ち込んじゃだめ、付け込まれる」
校長
「大丈夫、守る、学園の名誉にかけても」
校長がキッパリと言い切ると、佐野顧問と三輪担任も頷く。
史もホッとした様子。
校長
「ところで、今日は楽団の練習なの?」
史
「はい、今日は第九の練習です」
と素直に答える。
すると佐野顧問
「聞きたいなあ、一緒に行こう」
三輪担任
「そうだね、付きそうかな」
校長は
「じゃあ、警察に寄って、私も後で行く」
結局、校長室にいる全員が、カフェ・ルミエール楽団の練習を見に行くことになった。




