vs芸能スカウト(4)
集まってきた生徒の中から、柔道部三年の美佳が史とJ芸能プロダクションの杉本の前に立った。
美佳
「芸能プロダクションだか何だか知らないけれどね」
「史君は嫌がっているんだから、帰ったらどう?」
「それとも校門前で、待ち伏せって何?」
「スカウトって人さらいか何かかい?」
「いい?確かに芸能プロダクションのJは、超有名さ」
「柔道部の私だって知っているくらい」
「でもね、嫌がる人の腕をつかもうとするなんて、犯罪じゃないの?」
「有名芸能プロダクションだったら、何をしても許されるの?」
・・・聞いていて、ものすごいキレがいいタンカである。
杉本スカウトは、少し後ずさり。
美佳の次に柔道部顧問の佐野が出てきた。
佐野
「ここの校門のところには、防犯上の観点から、監視カメラを設置してあります」
「J芸能プロダクションの杉本さんですか?」
「ここで引き下がっていただかないと、当学園でも、それなりの対応を取らせていただきますよ」
「たくさんの将来有る生徒さんを、親御さんから預かっている責任がありますので」
さすが柔道部顧問佐野の太い声は、迫力がある。
杉本スカウトの顔は、真っ青になってきた。
そして、柔道部顧問の次に、校長が出てきた、
校長
「ことと次第では、今、あなたが取った言動の録画を当局に送ります」
そこまで言われた杉本
「いや・・・少し声をかけただけで」
「腕を取ろうとしたのは、もののはずみで」
「熱意のあらわれで・・・」
と言うけれど、史と対している時の、いやらしいような雰囲気は、皆無である。
それでも、今日、この時点でスカウトする状態ではないと理解したようだ。
「しょうがねえなあ」
とつぶやき、頭も下げず小走りに姿を消してしまった。
史
「すみません、皆さん」
「美佳先輩、佐野顧問、校長先生まで」
キチンと頭を下げる。
美佳
「いやいや、無事でよかった、ああいう芸能プロダクションって、いい噂聞かないから」
佐野顧問
「ああ、俺も一番気に入らないタイプだ、きつい言い方をしたけれど」
校長は
「史君、対面したのは今日が最初?」
と聞いてきた。
史は
「はい、何となく尾行されている感じがあったので」
「両親とマスターにも相談しました」
と答えた。
すると校長
「じゃあ、学園でも対策を練ろう」
「佐野顧問と一緒に校長室まで来てくれ」
厳しい顔になっている。




