史の音大練習と新たな問題(2)
史は
「うーん・・・誰?」
と思って後ろを振り返ると、その「尾行」の人はすぐに姿を消す。
そして、確認できる限り、その「尾行」の人は毎回違う。
音大生でもない、女性でもない。
史が首をかしげ、ムッとしながら家に入ると、母美智子が声をかけてきた。
美智子
「史、さっきね、カフェ・ルミエールで野菜とかを買っている産直市の人が電話してきた」
史
「え?農家の人がどうして?」
史はキョトンとしている。
美智子
「あのね、史の後をついていく、尾行とかストーカーみたいな人がいるんだって」
「それ把握している?」
美智子が、そんなことを言ってくるものだから
史は
「うん、最近気づいた、気持ちが悪い」
「でもさ、何をされたってわけじゃないし」
と答えた。
美智子
「でね、その産直市の人が言うのに、何かプロダクションの名前が入ったバンに乗って帰ったらしいの」
「うん、史が家に入るのを見届けた後ね」
そこまでは聞いているらしい。
史
「プロダクションって何?」
史には全く意味がわからない。
そんな話をしていると、由紀が帰ってきた。
そして
由紀
「史!狙われている」
「音大練習とか、危険だよ」
しかし、それでは意味がわからない。
史
「だから、尾行とかプロダクションって何?」
聞き返すと
由紀
「私の同級生も、柔道部の美佳とかレスリング部の女の子も見たらしい」
「芸能プロダクションだよ」
「おそらく音大に通う時に、スカウトの目に留まったんだ」
「かなりシツコイし、車に連れ込まれたら何されるかわからない」
美智子は顔をしかめた。
「あーーーそうかあ・・・」
「嫌だなあ・・・」
史も
「こういうのって、どうすればなくなるのかなあ」
考え込んでいる。




