マスターの披露宴計画
大旦那と奥様、晃の一家は、大旦那のお屋敷で話をしている。
大旦那
「結局、マスター、ああ、ついついマスターって言ってしまうけれど、佳宏の父、つまり私の弟の宏は、佳宏が五歳の時に病死して」
「その後は、佳宏君の母の佳子さんが十八まで育てたんだけど、佳子さんも身体が弱くてね、ガンだったから早くに亡くなってしまって」
奥様
「だから、その後はこの家で引き取ろうと思ったけれど」
「佳宏君は頑固で、大学までは行ったけれど、結局出奔」
「親戚衆の集まりには全く顔を出さず」
晃
「それでも、名門ホテルで料理長になるまで頑張って」
「たいしたもんだとね、尊敬していました」
美智子
「私はホテルで知り合ったけれど、晃さんに、そんな話を聞くまでは、お家柄のことは全く知らなかった」
大旦那
「ああ、佳宏は余分なことを言う男じゃない」
「だから俺だってたまたま、ホテルに宴会に行った時に気づいたんだ」
「それでも、俺を見たら本当に深く頭を下げるものだから」
大旦那は、涙を浮かべている。
晃は、ホッとした顔
「でも、これで大丈夫」
「いい結婚式にしたいなあ」
美智子もうれしそうだ。
「そうだねえ、マスターは料理できないから、ホテルでするのかな」
そんな話を聞いていた史
「あ!ちょっと困るかも」
慌てている。
大旦那
「え?何かあるのか?」
史も美智子も気がついた。
史
「あの・・・後任のシェフの新作ソースが気に入らないと思う」
美智子も
「うーん・・・美味しいけれど・・・マスターはムッとすると思います」
「涼子さんは最後には笑っていたけれど」
奥様が
「ああ、そうかあ・・・佳宏君は、それは頑固だなあ」
「そうなると」
少し考え込む。
大旦那
「ああ、全て昔通りのレシピを貫こう」
「そうするように、私が支配人とシェフに言う」
と、なんとかおさめた。
ずっと聞いていた由紀
「ねえ、横浜でも披露宴して、京都の集まりでも?」
と聞いたものだから
大旦那
「ああ、それは・・・そうなる」
と笑いながら頷く。
由紀
「やった!グルメ放題だ!」
手を打って大喜び。
その横で史がポツリ
「最近、姉貴は食べてばっかり」
「牛を通り越して象になる」
今回ばかりは、さすがの由紀も史をポカリできなかった。
何しろ全員が、史と由紀を見て、大笑いになっている。




