名付け親
さて、涼子には、大旦那にどうしても頼みたいことがあった。
それは、生まれてきた女の子の名付け親になってもらいたいということ。
変な神主とか坊さんより、由緒と格式の高い大旦那のほうが余程信頼ができる。
それに、大旦那に名前を付けてもらったと思えば、この子にも一生の宝になると思ったのである。
それについては、マスターにも何度も話をし、マスターも了承している。
ただ、それを言い出すタイミングが難しい。
ちょっと目を離すと、子供は泣き出してしまう。
それに、いつ誰がお祝いとして来るのかわからない。
それでも、涼子はタイミングを見計らって、
「ねえ、あなた、あのお話」
マスターに声をかけた。
マスターも、涼子の意図がすぐにわかった。
そして頷いて
「大旦那・・・あのお話ですが」
と頭を下げる。
大旦那は
「ああ、わかっている」
「いくつか、考えてきた」
と、うれしそうな顔をする。
その言葉で、涼子は本当に肩の力が抜けた。
「ほんと・・・ありがたい・・・」
涙まで出てきてしまった。
そんな涼子に大旦那が声をかけた。
「私ともう一人名前を考えているものがもうすぐ来る」
「少し待ってくれ」
そういって含み笑いをしている。
マスターも涼子も
「え?」
となっていると、本当にすぐにチャイムが鳴った。
マスターが玄関に出ていくと
マスター
「わ!晃さん!」
晃が立っている。
そして、その後ろには、史と由紀、美智子も立っている。
マスターは笑ってしまった。
「そうか、そう言えば・・・」
晃の一家を招き入れながら
「そう言えば、由紀ちゃんと史君の命名の時に、立ち会ったんだっけ」
そんなことを思い出す。
そして涼子にそれを告げると、涼子はうれしそうに笑っている。
さて、命名は次回となります。




