マスターの家で
史と由紀は、マスターの家についた。
すでに夕方なので、「こんばんは」とチャイムを鳴らすと、マスターがでてきた。
マスター
「ああ、横浜にいったんだって?」
「さっき支配人とシェフから電話があった」
と、話しながら、史と由紀の持つ紙袋の大きさに笑っている。
史
「何でも、挑戦の品なんだそうです」
と、挑戦の品を渡し、それ以外のお土産を様々、渡す。
マスター
「大変だったねえ、重たかっただろう」
「手首は大丈夫?」
やはり手首は、まだ心配になるようだ。
史
「ホテルからは、ホテルのバスで送ってもらいました」
と答えると
マスター
「ああ、それが当たり前さ」
と頷く。
そんな話をして、史と由紀がリビングにあがると、涼子は大きなお腹で座っている。
少し苦しげに見える。
史
「もうすぐですね、楽しみです」
由紀
「男の子かなあ、女の子かなあ」
ニコニコしている。
マスター
「史君がホテルから、いろいろ持ってきてくれてね」
と言うと涼子もニッコリ。
マスター
「何でも、シェフがさ、この俺に挑戦の品があるっていうものだから」
と、ニヤリと笑う。
それを聞いて涼子
「是非、見たい!」
いきなり元気になる。
その声を聞いて、マスターはキッチンに入った。
史
「僕には何となくわかります」
と言う。
由紀
「食べ物だよね、マスターに挑戦だから」
涼子
「おそらく肉系かな、漬けてある感じのもの」
そんなことを言っていると、マスターがお皿の上に、確かに肉のようなものを数切れ乗せて、持ってきた。
マスター
「牛肉を蒸してソースで漬け込んだもの」
「今までのホテルのソースにはなかった」
由紀
「美味しい・・・でも・・・不思議なソースだ」
涼子
「味に爽やかさがある、マスターの重厚な味と微妙に違う」
史だけがわかったようだ。
「おそらく・・・」
と言い
全員が史の顔を見ると
史
「柑橘酒だと思います」
「おそらくマスターのソースをベースに、シチリアとかのレモン酒を加えて漬け込んである」
マスター
「ふ・・・気に入らない」
と腕を組む。
それでも
「今の流行りかなあ・・・でも、何か、気に入らない」
と、難しい顔。
涼子が一言。
「まあ、料理はとことん頑固なの」
そう言いながら、クスクス笑っている。




