玉鬘講義(6)
晃は、話を続けた。
「さて、最後の望みで、玉鬘一行は、長谷寺にご参拝」
「今でもそうですが、山道やら階段でかなりな辛さもあります」
「しかも、門前で宿を営んでいた法師には、玉鬘一行のくたびれた風体を観察され、小馬鹿にされるという屈辱も受けます」
「まあ、いつの世も、僧侶は風体で人を判断する」
「お布施の額で、人の値踏みをする」
晃が小声で言うと、客の中からクスクス笑う声がする。
どうやら、同じような思いがあるようだ。
晃は、話を続けた。
「そこで、やはり、長谷観音の御功徳なのでしょうね」
「かつて玉鬘に使えていた右近に、バッタリ」
「そして、結局、源氏も迷ったのですが、源氏の養女として、源氏のもとに引き取られることになる、そこで一応、暮らしとしては安定を見ます」
晃がそこまで言うと、史が耳元で何か言う。
晃も頷き
「そこで、何故、本来の父である頭の中将に引き取らせなかったのか」
「ここにも、源氏物語の大きなテーマが込められています」
晃の言葉に客の目が集中している。
キッチンから出てきたマスターポツリ。
「晃さん、あの話をするのかな」
美智子も
「うん、避けては通れないね、まあ短い時間でどこまで」
「説明も難しいなあ」
洋子も
「うん、すごい人間関係というのか」
様々、つぶやいていると晃が話しだした。
「源氏物語のテーマの一つとして、継子の問題があります」
「当時は一夫多妻の時代」
「ということは、継子というものは必ずといっていいほど、できます」
「また、幼くして母親に死別する子も多かった」
「まず、光源氏、紫の上、玉鬘、女三の宮」
「死別ではないですが、母親から離されてしまったということで言うならば、明石の姫君」
「かなりな主要メンバーと思われるでしょう」
「その意味において、源氏物語の底流には、継子の幸せの問題があるのです」
晃は、由紀から冷たいほうじ茶をもらい、再びゴクリ。
白熱した講義が続いている。




