玉鬘講義(4)
晃が話を続けた。
「その後、玉鬘の母、夕顔は突然死、夕顔に仕えていた右近以外には、ほぼ誰にも知られない状態、当然娘の玉鬘も知らない状態で荼毘にふされてしまいました」
「玉鬘の関係者で唯一事情を知る右近は、口封じのため源氏に仕えることになり、玉鬘は乳母の夫が大宰少弐に転勤が決まったため、幼い身ながらともに都を離れ筑紫、今の福岡県に下ることになりました」
「ここでも、本来の父である頭の中将は、何も動きを見せません」
「頭の中将にとって夕顔など、格下の身分の劣る女、それに子供がいたとしても、正妻の母の弘徽殿の女御に見つかったら、どれほど嫌味を言われるのかわからない」
「そもそも、ほとんど関心がない状態であったのかもしれません」
「ただ、光源氏にしても、ほぼ事情を知っていながらも、自らの保身を優先し、内密に済ませてしまう、夕顔に仕えていた右近も光源氏との身分差を考えると、何も言い返せない」
「一人の人間の生死については、現在の日本とは全く異なる倫理観の中に暮らしていたとも言えるのです」
晃がここで一呼吸を置くと、キッチンからマスターと美智子が出てきた。
ワゴンの上には、何かの葉で包んだものが数多く乗っている。
マスターは
「はい、ここで奈良といいましょうか、本来は吉野の名物で、柿の葉寿司をお出しします」
「軽食となります、難しい話が続いたので、一服してください」
そして、洋子、美幸、結衣、彩が手分けをして、柿の葉寿司とほうじ茶を配って歩く。
「うん、食べやすい。これ好き」
「鯖と鮭、鯛もあるね」
「食べやすくていいな」
「ほうじ茶もほっこりして美味しい」
客たちからは、少し緊張する話の後なので、評判がいい。
晃と史も柿の葉寿司を食べながら、話をしている。
「少し細かすぎたところと、端折ったところがある」晃
「うーん・・・しょうがないよ、夕顔だけでも、二時間はかかる、どこかで端折らないと無理」史
「テーマは玉鬘だしな」晃
「もう少しカットしないといけないかな」史
「うーん・・・九州のゲンも面白いけれど」晃
「まあ、面白いけれど・・・うーん・・・」光
かなり深い話をしている。
カフェ・ルミエールの扉が開いた。
入ってきたのは、由紀、里奈、奈津美。
大きな紙袋をそれぞれ抱えている。
一体、何を持ってきたのだろうか。




