玉鬘講義(1)
カフェ・ルミエールの今夜は、予定通り、源氏物語学者の晃と手伝いの史による「玉鬘を考える」のお話会になる。
「少人数で」との話で、マスターも晃も考えが一致したので、地下のホールではなく、カフェ・ルミエール店内のステージに晃と史がのぼる。
二人の上には、大きなスクリーン、そのスクリーンに画像を写すのはPC操作で史が行う。
資料そのものは、晃と史が協力して作った。
カラー刷りで、国宝源氏物語絵巻の数カ所の場面を印刷してある。
また、店内の掲示板に、晃の源氏物語「玉鬘お話会」の話を書いたところ、すぐに五十人以上の希望者があった。
そのため、今日の夜は、「完全貸切状態、予約者のみ入店可能」状態になった。
マスターは
「馴染みの客には申し訳ないなあ」
と頭をかく。
洋子や奈津美、結衣、綾の昼間喫茶部メンバーは、店員として聞くことができるので、ニコニコしている。
洋子
「そうかあ、玉鬘か・・・晃さん、どうやって説明するのかな」
奈津美
「お母さんの話もするんだろうね」
結衣
「ああ、夕顔ですね・・・まあ・・・そうですねえ」
彩
「取り殺されて死んじゃった女性で」
マスターは
「そうだね、そこの話をしないと、九州の話もできないね」
美幸も話に加わってきた。
「母親は、取り憑かれて死んでしまい、娘は波乱万丈ですねえ」
とにかく話は盛り上がっている。
夕方五時に、晃と史、美智子が入ってきた。
晃
「よろしくお願いします」
とキチンとお辞儀をすると、史と美智子も、それにならう。
どうやら「キチンとお辞儀」は、晃の指導かもしれない。
マスターも
「はい、こちらこそ、料理のほうは美智子さんも手伝ってくれるそうで」
頭を下げる。
それでも、洋子は由紀がいないことが気になった。
洋子
「由紀ちゃんは、試験で来れないの?」
そうとは思うけれど、家で、一人で寂しい思いをしているのが可哀想に思う。
史が答えた。
「ああ、姉貴は後で来ると言ってました」
「何か準備していました」
「ああ、僕にはわかったけど、内緒にしてって言われて」
洋子
「ああ、じゃあ、黙っておいて」
「また、ポカリされるのも、大変だから」
そこで全員、大笑いになっている。




