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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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由紀の進学(3)

由紀は、父晃からもらった有名私学の資料をずっと見て、考えている。

「文学部系統かあ・・・」

「でも、古典はどうかなあ」

「下手をすると、史と同じってなるな」

「史が音大に行くのも不安だけれど、古典文学を勉強されるのも不安だ」

「また比較されて、辛い思いするな」

そこでため息をつく。

「ここでも、史にかき回されるの?私って何?」

またため息をつく。

「でもなあ・・・母美智子だけだと、史の監視ができないな」

「となると、あまり遠くの大学はなあ・・・」

「父さんには言いづらいし」

いろいろ考えていると、ノックの音がして

「姉さん」

史の声が聞こえてくる。


「何よ・・・」

さっきまで泣いていた顔を拭いてから、ドアを開ける。

史は

「あの、この本、渡しておく」

「神保町で買ったけれど、姉さん、読みたかったでしょ?」


由紀は

「え?何?英語の本?」

そして手に取って驚く。

「ヴァージニア・ウルフのオーランドー」

「キャサリン・マンスフィールドの短編集」

由紀は、うれしくなった。

本当に読みたかった本だったから。


ついつい珍しく

「史!ありがとう!」

お礼まで言ってしまう。


史は

「ああ、試験が終わったら読むんだね」

「じゃあね」

少し笑った。



史が自分の部屋に戻ってから、由紀はまた泣いた。

「史も・・・うれしいなあ」

「英文学にするかなあ・・・うん・・・」

「きっと、これは神のお告げだ」

由紀はここで英文学部を決めた。

少し、ホッとした。


ただ・・・少しホッとすると


「でも、あの史の試験が終わったらって何?」

「あのエラそうな顔が気に入らない!」

「弱虫史のくせに!弟のくせに!」

結局、いつもの由紀に戻っている。

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