史が京都に?(完)
史の京都行きの話は、洋子のとりなしで、無事決着がついた。
およそ一週間の旅行で京都を歩くということになり、予定そのものが決まったわけではない。
その意味では、「あいまいな結論」とも言える。
大旦那は史から直接電話をうけた。
史
「いろいろ、ご心配していただいて、ありがとうございます」
「まだ、京都に住むとか古今、新古今の研究とまでは考えていなくて」
「ヨーロッパとかアメリカとか行きたくて、古代ローマの勉強もしたくて」
「京都には一度、一週間ぐらいは旅行したいと思いますので、その時にはよろしくお願いします」
史の電話は、思っていることそのままである。
大旦那も、鷹揚に史に答える。
「ああ、加奈子が先走ってしまって、悪かったね」
「そうかあ、古代ローマか・・・面白そうだなあ」
「私も行きたいくらいさ」
「京都にもおいで、なるべく早くね」
「みんな待っているから」
大旦那は一呼吸置いた。
「史君の本当の出身は京都さ」
「だから、その血を感じて欲しいな」
史は
「はい、ありがとうございます」
「楽しみにしています」
そんな感じで、祖父と孫の会話は終わった。
さて、その話の後、史の家では、由紀の文句が発生。
由紀
「だいたいね、姉の私をナイガシロにして、加奈子ちゃんと京都を歩くって何ごと?」
「その前のローマだことの、アメリカなんて論外!」
「史!どうして、そこまでアホなの!」
「呆れてものが言えない!」
・・・・そう言いながら、ずっと史への文句を言い続ける。
呆れた母の美智子
「あのさ、大旦那と史の話でしょ?」
「何で由紀が介入して文句を言うの?」
由紀
「う・・・うるさい・・・」
少し引いている。
父の晃がポツリ
「そう言えば、しばらく実家に帰っていないなあ」
「墓参りと源氏の旧跡でも」
「どうだい?全員で」
史の家庭は、「あいまいながら」ようやく、それで落ち着いたのである。




