マスターと大旦那(2)加奈子の登場
マスターは少し首を傾げた。
「御大のお気持ちはわかりますが、あくまでも史君の将来ですし、史君に決めさせてはどうでしょうか」
大旦那は頷き
「ああ、それはそうさ、晃や美智子さんにも考えがあるだろうしな」
マスター
「晃さんは、源氏学者として大成されましたし、史君も源氏には詳しいですね」
大旦那
「ああ、次男だったから自由に学問の道に進んでもらった、それが晃にも合っていたんだろう、そのうえ美智子さんのような素晴らしい伴侶を迎えてね」
マスター
「祖父としての本音は?」
大旦那
「晃を超えることは困難、となると古今とか新古今の研究者がいいと想うけどね」
マスター
「うーん・・・今の若い人に受けますでしょうか・・・難しいなあ」
マスターが首を捻っていると、応接間の扉が開いた。
そして入ってきたのは、ものすごいというか、目もくらむような超美少女。
マスターを見て、丁寧かつ上品なお辞儀をする。
マスターは
「え?」
その超美少女の顔を見て、次に大旦那の顔を見る。
大旦那はクスッと笑う。
「ああ、加奈子だよ、由紀と同い年」
「昨日、京都の実家から出てきたんだ」
その加奈子がマスターの前に来た。
「お久しぶりですね、マスター」
「これから、カフェ・ルミエールに行きたいのですけれど・・・」
「由紀ちゃんにも会いたいし、史君にも」
少し頬を赤らめる様子は、薔薇の花のように美しい。




