マスターと大旦那(1)
マスターは大旦那から呼び出しを受け、朝から白金台の大旦那の屋敷にいる。
その屋敷は、さすが旧摂関家として都内に持つ屋敷、庭から屋敷の設備まで豪華かつ格式が高い。
大旦那の用事としては、「カフェ・ルミエールでの源氏講義の話について」だったけれど、最初は、どうしても、世間話である。
大旦那
「政府もなかなか苦労しているようだな」
マスター
「何しろ彼も時々誤解されるし、それでムキになることもあるし」
大旦那
「まったくなあ、教育を間違えたかな、トップがオタオタしてはいけない」
マスター
「権謀術数を極めた旧摂関家からすると・・・」
大旦那
「ああ、彼は子供だ、それと周囲も、野党も」
マスター
「これほど周辺国が騒がしくて日本も危険なのに」
大旦那
「まあ、我が国は古来、内向きの国、足の引っ張り合いしか出来ない」
「苦労するのは、まともな官僚と国民さ」
・・・そんな政治ネタの話がしばらく続き、大旦那は話題を変えた。
大旦那
「カフェ・ルミエールの経営はどうだ、順調か?」
マスターは胸を張った。
「はい、お陰様で、昼は洋子さんをメインに、夜は私ですが全く問題がありません」
「地域の方にも、快く利用していただいております」
大旦那は、顔がやさしくなった。
「ああ、地域の方が喜ぶのがいいな」
マスター
「楽団も評判で、次の演奏会に期待する声も高くて」
大旦那
「ああ、ありがたいなあ」
「史も、少しずつ成長しているしな」
マスター
「本人は音楽の道には進まないと言い切っています」
大旦那
「ああ、もったいないと言えばそうなるけれど」
「史の音楽の才能は認める、しかし職業としては別だと思う」
大旦那は一呼吸した。
そして
「彼が望むなら、別の仕事をさせたいなあ」
大旦那は、目を細めた。
何かを考えているようだ。




