彩とデート?(3)
彩にとってはドキドキこのうえない状態、史にとっては全く冷静な状態の中、車は銀座四丁目に到着した。
「さて、どうする?」
彩は「できれば手をつないでしまいたい」と思うけれど、なかなか手を伸ばせない。
手をつないで
「え?彩さん?何?」と言われると、本当に恥ずかしいし、落ち込んでしまうかもしれないと思う。
そんな史が彩に声をかけてきた。
「ねえ、彩さん、せっかく銀座に来たんだから、少し寄りたい店があります」
「近いからいいかなあ」
彩としては
「ああ、問題ないよ、どこ?」
手をつなぐのは難しいけれど、それはチャンスを狙うにして、史の寄りたい店に行くことにした。
そして、その店は本当に近かった。
小さい店だけど、お香の店。
そこで史は、店員といろいろ話をしている。
どうやら、昔からの知り合いのようだ。
彩としては、「すごい店、和風だけど、洋風のフレグランスもある、さすが源氏学者の息子だ」と思っていると、時々店員から「晃先生」と言う名前が出てくるから、史の父の晃もここに来るのだと思った。
そして史は、沈香と白檀、藤のオイルを買っている。
彩も、「じゃあ、私も」ということで、沈香オイルを買う。
店を出て史に
「すごいねえ、史君みたいな高校生でこんな店に、素敵かも」
そんな声をかけると
史は
「はい、子供の頃から家族で」なんて、サラッと答えてくる。
彩は「・・・さすが摂関家の流れ」と思うけれど、引いてはいられない。
とにかく、まずは史とランチをしようと考えた。
彩は
「ねえ、史君、荷物が多くなる前に、どこかでランチしよう」
「やっと正面で史をじっくりと」となるので、ちょっと緊張気味である。
史は少し考えて
「えーっと、ここの周辺だと、老舗が多いですね」
「御寿司もあるし、カツカレーの元祖とか、洋食の超元祖の煉瓦亭とか」
「こっちの道だとスペイン風バルとか、蕎麦屋とか」
とにかく、スラスラ、ものすごい銀座通である。




