お昼のメニュー(4)
お昼のメニューにキッシュを追加するということになり、美智子、洋子、奈津美が作った五種類のキッシュを、史と由紀、マスターが「味見判定」をすることになった。
「丸ごとトマト二種チーズソースのキッシュ」
「ラタトゥイユのキッシュ」
「ラザニアのキッシュ」
「スモークサーモンとほうれん草、じゃがいものキッシュ」
「プリンのキッシュ」
それぞれ小さく切り分けられ、三人で試食する。
「ふむ・・・それぞれよくできている」マスター
「全然、問題ないよ、美味しい」由紀
そこまではよかった。
史だけが少し首をかしげる。
「食事系のキッシュはいいけれどさ、プリンはどうなの?」
「美味しいけれど、プリンのなめらかさとキッシュのザラザラ感が口に入った時に違和感がある」
史の意見で洋子が腕を組む。
「そうか、キッシュ専門店のお菓子系キッシュの中では考えられるけどってこと?」
史も頷く。
「このお店は、ケーキがこれだけ美味しいのがたくさんあるのに、わざわざプリンのキッシュを食べる人がいるのかなあって思う」
マスターも頷いた。
「ああ、それはそうだね、味そのものではいいけれど、舌の触感か」
「そうなると無理して作らなくてもいいかなあ」
「このお店では、お菓子系、特にプリンのキッシュはいらないかなあ」
由紀は考え込んだ。
「ムム・・・アホの史にしては、珍しくマトモな意見だ」
史は、また意見を言う。
「食事系は、もう少し香辛料を使うと、味のエッジが立つ」
「キッシュの場合は、どうしても生地で重たくなるから、そのほうがいいと思う」
母の美智子は、ウンウンと頷く。
洋子は、目がパッと輝く。
奈津美は、史の言葉をメモしている。
結衣と彩は、目をパチクリ、史の味覚に驚いている。
由紀は、ムッとした顔。
そもそも史が意見することが気に入らないようだ。
突然、マスターが、ニヤリと笑って立ち上がった。
「史君、手伝って」
史に声をかけ、キッチンに一緒に入っていく。
「う・・・アレンジする気だ」美智子
「夜のカフェ・ルミエールにも出すのか」洋子
「ほぼ、決まり」奈津美
「伝説の名シェフのキッシュかあ・・・しかも史君とコラボ!」結衣
「えへへ、楽しみが増えたなあ」彩
その後、マスターと史により、それぞれ香辛料を大胆に追加した「エッジが立ったキッシュ」が焼きあがった。
「ふう・・・負けた」
それを食べた美智子の言葉が全てだった。
食べた人全員が、「ほおっ」という味のキッシュになった。
「よし!明日から楽しみだ」
まあ、とにかくこれで、洋子の悩みは、解消となったのである。




