カフェ・ルミエール楽団演奏会(4)
史と里奈が、地下ホールに入ると、既に楽団員がそれぞれの楽器を抱え、事前練習に余念がない。
「じゃあ、あとで」
史は里奈に声をかけ、ステージに。
里奈は「うん、思いっきりね、終わったら一緒に帰ろうね」
・・・うん、なかなか、仲良しである。
史がステージにあがると、楽団員たちが史にいろいろと声をかけてくる。
「音大生とか、指揮科の先生とか来ているみたい」
「内田先生も来るなんてすごいね、さすが史君」
「練習が楽しみだけど、ちょっと緊張もするね」
史は、落ち着いている。
「普通にピアノを弾くだけ、プロではないので、まずは自分たちの楽しみです」
そんな話をしていると、地下ホールの扉が開いた。
そして、榊原先生、岡村先生、内田先生、「高名な指揮科の先生」、そして十数人の女子音大生が入ってくる。
そして、女子音大生たちは、そのまま客席に座るけれど、「先生方」は、そのままステージにあがってきた。
「うわっ」となる楽団員に、榊原先生が「先生方」を紹介する。
「ああ、岡村先生は馴染みだと思うけれど」
「内田先生も超有名なので」
「それから、私の音大の指揮科の山岡先生、斎藤先生、尾高先生も興味があるそうなので」
榊原先生の紹介で、諸先生方が、それぞれ頭を下げる。
それで楽団員は、ますます緊張。
「ねえ、山岡先生、斎藤先生、尾高先生って・・・かつての日本のトップ指揮者たちだよね」
「すっごい・・・というかヤバイ・・・自信ない」
「・・・で、史君は?」
楽団員は、史の顔をそっと見る。
「う・・・あの超美少年の顔が、引き締まっている」
「超可愛い上に、超美形だ」
「気合満点って感じだ・・・」
「これは、何かが起きる」
「じゃあ、最初はピアノ協奏曲から」
榊原先生は、最初の練習曲を、「ベートーヴェンピアノ協奏曲第五番皇帝」と指定。
そして指揮台に登り、指揮棒を振り下ろした。




