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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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史の音大見学(6)

史と内田先生の連弾が終わった。

途端に、大拍手である。

「え?何?ここ、防音室でしょ?何で拍手?」

あまりの拍手の大きさに「?」となる史ではあるけれど、すぐに気がついた。

レッスン室にして防音室の扉が開けられ、数多の、おそらく音大生が聞いていたのである。


「気がつかなかったの?」

内田先生が聞いてくるけれど

「もう、楽譜を追うにに夢中で、初見ですし」

史は、キョトン状態である。

その史の答えに廊下から


「えーーーーマジ?初見?」

「すっごい!さすが一位だ!」

「それにさ、可愛いよねえ」

「私も連弾したい、お願いするかなあ」

「この音大に来るのかなあ、私卒業しないことにする!」

・・・・

最後は、よくわからない反応まで聞こえてくる。


「確かに榊原先生と岡村先生の言うとおりだね」

「こんな面白いとは思わなかった」

内田先生の顔も紅潮している。


しかし、史はすぐに真顔に戻った。

そして恐る恐る

「あの、そろそろ帰りたいんですが」

三人の高名な先生方に頭を下げる。


「え?まだ遊ぼうよ」内田

「何か用事があるの?」榊原

「学生たちも、史君と何かしたいみたいだよ」岡村

先生方は、何とか史を引き留めようとするけれど、史は鞄を持ってしまった。


「今日は見るだけでしたけれど、思いがけなく素晴らしい体験が出来ました」

「本当にありがとうございました」

そして、史はキチンと頭を下げ、そのまま走ってレッスン室を出ていってしまう。

その史に声をかけようとする音大生などには、見向きもしない。



「あらら・・・」内田

「まあ、おそらく・・・」榊原

「里奈ちゃんかな」岡村


榊原と岡村の予想通り、音大の正門前には、不安な顔をした里奈が待っている。


「お待たせ!」

史が里奈に声をかけると、里奈はホッとした顔。


「どうだったの?」

里奈が声をかけると

「見るだけっていったのにね、弾かされた」

史は、口を少し尖らせる。


「それだけ、才能があるってことだと思うよ」

「史君、音大に入るの?」

今度は里奈が恐る恐るになる。


史は

「まさか、入らないって!」

「音楽って、職業にするものじゃないもの」

全然、音大には興味がない様子。


里奈は

「じゃあ、進路は?」

「もうすぐ二年生だし」

首を傾げる。


史も首を傾げた。

「そうだなあ、考えていないけれど」

「父さんみたいな、古典研究もいいなあ」

「和歌には興味があるね」


そんな答えであって、史には音大進学の考えは無いらしい。

先のことは、わからないけれど。

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