里奈にライバル出現(1)
毎日、史と登下校、学園内やカフェ・ルミエールでは「ほぼカップルをしかたなく黙認状態」であった里奈に、強力なライバルが出現した。
名前は、恵梨香、史とも里奈とも同じクラス。
部活は合唱部に属している。
顔はかなり可愛らしい、スタイルもキッチリ整っている。
その上、積極的な性格、その恵梨香が史に興味を強く持った。
発端は史の合唱部への参加時点らしいけれど、その後の史へのアタックが凄まじい。
「ねえ、史君!チョコレート作ったの、味見してくれる?」
「史君、ピアノ弾いて!それで歌いたいの」
「学園で弾きづらかったら私の家でもいいよ」
「それから源氏も教えて!私も源氏が大好きなの!」
「カフェ・ルミエールで私もバイトしようかなあ、史君と一緒がいいな」
そんなことを言って、恵梨香は史の周りに群がる女子学生を押しのけてまで、史に迫る。
「えっと・・・今日は・・・」
「ピアノのレッスンとか・・・」
史は、どうやら「強引な」アタックは苦手らしい。
何とかして、今のうちは逃げているけれど、それもおそらく風前の灯火。
姉の由紀は、そんな史の「腰引け様子」を苦々しく見る。
「史がキッパリ言えばいいの!」
「里奈ちゃんって、やさしくて可愛い子がいるんだから」
「ああいう煮え切らない態度がダメって叱るんだけど」
里奈の耳にも、そんな話が飛び込んできた。
それを聞いた里奈は、本当に苦しいようだ。
「う・・・私は汗臭い柔道部」
「恵梨香ちゃんは、趣味が音楽で史君と共通点が多い」
「しかも源氏まで?私、源氏読んでないもの・・・ヤバイよ・・・」
「恵梨香ちゃん、可愛いし、スタイルいいし・・・」
「話題が合うのは、私より恵梨香ちゃんだ・・・ヤバイなあ・・・」
「史君・・・私じゃダメかなあ・・・自信ないよ・・・」
また、眠れない日が始まってしまった。
そんな里奈はともかく、恵梨香は史に猛アタックを続けるようだ。
「うん、私は奪い取るタイプ」
「それに、こんなに魅力あふれる史君だもの」
「ああ、史君とデートしたいなあ・・・」
「これは恋だ、私の恋は燃え上がる恋」
「絶対に、奪い取る」
「里奈ちゃん?悪いけれど敵じゃない」
恵梨香の瞳には、恋の炎がきらめいている。




