史の合唱部取材(4)
「え?何?あなたたち?」
由紀は、他の合唱部員が「史にお願いがある」なんてことは、何も聞いていなかった。
少し戸惑っていると
「あのね、史君!コンクールでピアノ弾いてくれないかな!」
「私たち、史君のピアノで歌いたいの」
由紀にも、「当の史」にも、全く考えもしていない「お願い」である。
「・・・あ・・・それはちょっと・・・取材もできなくなるし・・・」史
「今から急に練習参加なんて無理」由紀
珍しいことに意見が一致する史と由紀であるけれど、他の合唱部員の拍手が始まってしまった。
「えーーーーどうしよう・・・」史
「うーーーん・・・やだーーー史と練習なんて・・・」由紀
「僕だって嫌、学園でも家でも、姉貴と一緒なんて」史
・・・・
いろいろ小声でやりあうけれど、拍手はなりやまない。
二人がためらっていると、音楽室の扉が開いた。
その扉から、山本学園長、三輪担任、元オペラ歌手で合唱部指導者となった岡村が入ってきた。
「ああ、史君しだいだよ、でもぜひ出てもらいたいなあ」岡村
「取材の方は、取材として出来ると思うよ、出てみたら?」三輪担任
「学園長としても期待します」山本学園長
「・・・これって、姉貴の策略?」史
「アホ!そんなことするわけないでしょ!」
由紀は史の頭をポカリ。
しかし、そんなことを二人でやっている状況ではない。
「わかりました、今回限りで」
史も、逃げようがなかった。
そして史は、またしても拍手と「史くーん!」という女生徒の歓声に包まれる。
「ああ!このアホの史!家に帰ってピアノをシゴクから」
由紀も仕方がなかった。
ということで、ピアノ伴奏として、史の合唱コンクール出場が決まった。
史の合唱部取材は、史と由紀にとって思いもよらない「宿題」を抱えることになったのである。




