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カフェ・ルミエール  作者: 舞夢
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史の合唱部取材(3)

史が見守る中、合唱部の練習が始まった。

練習曲はモーツァルトのレクイエムの中の「ラクリモサ」。

繊細にして崇高さにあふれる合唱曲の中でも、白眉の曲である。

音楽室は、しばし、天使のいる空間となった。


そのラクリモサの練習も終わり、部長の由紀が目配せをしてきたので、史は「新聞部」としての取材をすることになる。


「今回のコンクールに向けての抱負」

「練習において苦労しているところ」

「好きな合唱曲、取り組んでみたい曲」

「学園内に向けた合唱部としてのメッセージ」

・・・・・・・

史は、様々、事前に文書にて申し込んであった「定番の取材項目」で、丁寧に聞き取り、メモを取る。

そして、その態度は部長の由紀にしても、他の合唱部員に対しても変化はない。

姉の由紀としては

「史のやつ、しらばっくれて!」と思うけれど、聞き出されると、どうにも「素直にポンポンと」話してしまう。

「これが聞き出し上手って評判か・・・ちょっと気に入らない、それが女どもが群がる原因だ」と思うけれど、由紀自身が話し出すと止まらないタイプだ。

結局、他の合唱部員に「ねえ、変わってください」「私も史君とお話したい」と言われるまで話してしまい、変わるしかなかったのである。


「あいつら・・・史なんかに、顔を赤くして」

「ああ、気に入らない、まだ、ノーミスだし」

「弟のくせに、軟弱の史のくせに」

由紀は、そう思うけれど、とにかく史の周りに合唱部員が「群がって」しまい、どうにもならない。


「はい、これで、なんとかまとめます」

ようやく取材を終えたのか、史がチョコンと立ち上がった。

そして全員に声をかける。

「それでは、コンクール頑張ってください」

「必ず、応援に行きます」

「いい記事を書けると思います」

またしても、史にしては珍しい張りのある声。


由紀としても

「はい、ありがとう」

と応えるしかない。


そして、史も由紀も、これで音楽部から、史が姿を消すと思った。

ある意味、「ホッと」した。


・・・しかし、そう簡単には、話が進まない。


なんと由紀を除く合唱部全員から、史に声がかかったのである。


「史君!」

「私たちからもお願いがあるの!」


史も由紀も、何が何だか、さっぱりわからない。

同じ顔で、キョトンとなっている。

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