新作研究会(2)
史と里奈の前に置かれた、美智子と洋子の合作菓子は「栗きんとんのタルト」だった。
「え?マジ?」史
「ほ~~~・・・」里奈
晃、由紀、木村親方、奈津美も集まってきた。
「ああ、これかあ・・・」
晃には思い当たることがあるようだ。
「え?これ?知らないよ?父さん」
由紀は、首を傾げている。
「栗きんとんを作っているのは見ていたけれど、まさかね」
木村親方は、面白そうな顔になる。
「いや、パワーあふれる新作だなあ」
奈津美の、喉がゴクリと鳴っている。
「さあ、全部試食してみましょう」
いつまでも、見続けているわけにはいかない。
それぞれが作ったお菓子の試食会が始まった。
「いや、このチョコレートと餡のケーキ、シナモン、少しの干しリンゴとリンゴのお酒ですか?これも美味しいですねえ」木村親方
「いや、この珈琲クリーム饅頭、しかもアイリッシュ・ウイスキー入りとはねえ・・・さすが木村親方です」晃
「私は、柚子クリームチーズケーキが好き、さわやかで」洋子
「まさか、最中の中がフルーツサンドって気がつかなかった、日本酒の香りも華やかでいいなあ」由紀
それぞれ、あちこち手を出して食べているが、概ね全てが美味しいらしい。
里奈も栗きんとんタルトを頬張っている。
「そうだよね、栗きんとんって、お正月だけって思っていたけれど」
「こうすると、いいなあ」
史は、全部のお菓子を食べた。
しかし、栗きんとんタルトが一番気になるようだ。
「栗きんとんと、タルトがしっくりとして、食べやすい」
「でも、どこかで食べたことあるなあ」
そんな史に由紀が文句を言う。
「そんな父さんも史も、母さんは作ったんだから知っているよね!」
「どうして私だけ知らないの?」
由紀はむくれている。
「ああ、それはね」
美智子が晃の顔を見た。
晃が頷き、話し出す。
「ああ、栗きんとんのタルトは、実は御大が考えたんだ」
「もちろん、アレンジはしてある」
「由紀だけが知らないのは、京都の御大の家でね、食べた時に由紀が風邪を引いていてさ、寝ているしかない状態」
「父さんと母さんと史だけが食べたから覚えている」
「それでも、史は三歳の頃だから、よく覚えているねえ」
しかし、そんな説明では、由紀は納得できない。
「・・・だったら後で、私のために作ってくれればいいのに・・・」
「史って、そういう時だけ元気・・・」
しきりとブツブツと呟くけれど、周囲は誰も聞いていない。
洋子が木村親方に声をかける。
「木村さん、今日のレシピは共有しましょう」
「お互いの店で出しませんか?」
「その後のアレンジはおまかせでどうでしょうか?」
木村親方もうれしそうな顔になる。
「いやーーーそれを言ってもらうと、励みになりますねえ」
「両方の店に行く楽しみができます」
美智子が最後に
「あ!マスターと涼子さん、美幸ちゃんの分も残さないと!」
「というか、届けないと!」
「自分たちばかりで楽しんでいるって怒られるって!」
全員が大笑いになっている。




