全て自分と重ね合わせる
テレビを見た。
テレビを見つめた。
テレビにかじりついた。
一斉にみんなが踊りながら歌うCMが流れた。
とても楽しそうだ。
カメラの向こう側に立たされたとき、一瞬でも楽しそうにしたことがあっただろうか。
次のCMに変わった。
ジョッキに注がれたビールを人気女優が一気に飲み干すCMが流れた。
気持ちが満ちたとしても、それはビールのように一瞬で飲み干されてしまう、そんな人生だった。
テレビ画面は番組へと移り変わっていった。
羊が犬に追われて、住み処に戻される映像が流れた。
僕が羊で、その他の全てのものが犬、そんな生活をずっと送ってきた、僕の人生はそんなものだった。
次に結婚式でケーキが倒れてしまう映像が流れた。
女性に恵まれない人生で、自分の結婚式の想像さえも、まともにしたことがなかったから、よく分からなかった。
そしてペットのオウムがオリジナリティーのある歌を歌う映像が流れた。
みんなの言う通りに行動してきた人生で、オリジナリティーなんて僕はほとんど考えて来なかった。
僕の人生は、そんな人生だった。