2nd
彼を愛するが故に
〜2nd〜
「…くん!…浜崎くん!」
遠くで俺を呼ぶ声が聞こえる。
ああそうだった。確か俺は長谷川にスタンガンで気絶させられて、それで……
「浜崎くん!」
「っ!?」
「浜崎くん!起きた?」
「あれ、和田先輩…?」
「良かった!浜崎くん起きたね!」
「ここは…?」
「ここは私の家だよ。浜崎くんをここまで連れ出すのに苦労したんだからね!」
「連れ出す……?」
「そう。大変だったんだよ?」
「和田先輩、事情を詳しく────」
俺が言葉を言い切る前に、ピンポーン…と、和田先輩の家のインターホンが鳴る。
宅配便とかそんな生易しいものではないのだと直後に理解した。
ピンポン ピンポン ピンポン…
断続的にインターホンが鳴り響く。これは明らかに宅配便などではない。誰かが意図的に連続して鳴らしている……
「え、まさか……嘘でしょ…」
「…?どうかしたんですか?」
「浜崎くん!隠れて!」
「え?隠れるって…」
「いいから隠れて!」
状況が飲み込めないまま、俺はとりあえず、側にあったクローゼットの中に隠れる事にした。嫌な予感が脳裏をよぎる。その間も鳴り止む事のないインターホン。
「待って!今出るから!」
和田先輩のその一言で、先程まで断続的に鳴り響いていたインターホンがピタリと止んだ。恐らく和田先輩が部屋に招き入れたのだろう
「……やく…」
クローゼットの中ということもあり、相手の声がよく聞こえない。
「…はやく!」
辛うじて聞こえた声は女性の声。何かを叫ぶような声。しかしどこか聞き覚えのあるような声。
「早く出してください!先輩の家に浜崎くんがいるのは分かってるんですから」
「真依ちゃん、とりあえず落ち着いて。……ここに浜崎くんはいないよ」
真依……その名前を聞いた途端、俺の背筋に悪寒が走る。声の主は俺を監禁した長谷川だったのだ。
「嘘…。浜崎くんがこの家にいるのは分かってるんですよ?隠したって無駄ですよ」
「……どうしてこの家にいるって分かるの?」
「私が浜崎くんを、」
「…」
「1人暮らしのはずの先輩の玄関先に男物の靴があるなんて有り得ないじゃないですか!?まさか先輩が男物の靴を履くとも思えないし」
「それが浜崎くんの靴とは限らないでしょ?」
「いいえ、」
本当に危ない子だと。こんな子を浜崎くんに渡すわけには行かない、私は咄嗟にそう思った。私が守らなきゃいけないと、そう思った。