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森林

前回までのあらすじ

師匠と出会い、今度は安く授業を受けることにした勇者。ここでなんとカラオケボックスに忘れてしまっていたことに気がつき、全力でカラオケに向かう。するとそこにいたのは告白をする前に断られた昔の彼女だった。

「最近なんか面白いことねぇーなー」


「んだな」


「ぼくもそう思う」


 俺と光牙、二人でのんびりと投稿しているとき、ふと思いついたことを話すだけで会話がつながる。


 親友とはいいものだ。何気ない時間が、楽しい時間へと変わるから。


「そういや最近エクストリームアイロンがけにハマってさ」


「な、なんだよそれ」


「ぼくも気になる」


 初めて聞いたぞエクストリームアイロンがけなんて。


「なんか過酷な状況下でアイロンがけする競技らしい。その美しさによって得点が変わる競技なんだって」


「へぇー楽しそうだな。なんだ、校長先生とかの前でか」


「辛そうだな」


 半分冗談で、笑いながら俺は言った。だが光牙は真面目な顔をして「甘っちょろいこと言ってんじゃねぇぞカス」と言ってきた。


 眉ひとつぐらい動かしてもいいじゃねぇか、冗談の通じねぇクソ野郎だな。


「話によると川とかでもやるらしい」


「アイロンがけって乾かしたりシワを無くしたりするために行う行為……だよな」


「……」


 趣旨が変わってやがる。なんだそれアイロンがけしなくていいじゃねーか、アホらしい。










 ×××










 ぼく、村上瑞樹はこの状況に絶望していた。


 誰も、ぼくの存在に気がついていないのである!!


 友達の二人ですらぼくを見ようともしていない!?


 さっきの会話だって結構相槌打ってたんだが!? 気配遮断なんて日常でいらねぇんだよ!


 これはまずい……一体どうすれば……。


「……そういえばさっき二人とも、エクストリームアイロンがけがどうのこうのって言ってたな……」


 そうだ!


 これだ!


 エクストリームアイロンがけで、二人の気をこちらに向けることができれば!


 影薄いキャラも脱却できる!


 よし! グーグルで検索してやり方を……。







「いや無理でしょこれ」











 ×××






 一週間後。






「そういえやお前、最近自転車登校してないけど、どうかしたのか?」


 光牙がそんなことを言ってきた。


「あぁ、自転車なぁ……なんか取られちまったんだよね」


「取られたぁ!? バカじゃねぇのかお前!?」


「うるせえなぁ! 俺だってまさか取られるなんて思わなかったんだよ! ……しかも、みてくれよこれ」


 そう言って俺はポケットの中身から一枚の紙を取り出した。


「ん、なになに『一週間後、シワを伸ばして返しにきます、怪盗M』だぁ? 何これ」


「俺もよくわかんない……」


「は、はやしだくーん!」


「ん!? こ、この声は柊さんか!?」


 後ろから声が聞こえてきた。セイントボイスが耳に安らぎを与えてくれる。


「はぁ……はぁ……あの、実は林田君に伝えたい異常があって……」


「なんだい……ホラ、落ち着いて?」


「やっぱり気持ち悪いな林田」


「実は、昨日林田君の着てたTシャツを盗もうと思って家に忍び込んだんですが、その前に林田君の家に誰かが入ってたんです!」


「な、何いっ!? 泥棒が入ってきてたのか!?」


 なんてことだ、柊さんが教えてくれなかったら一生気がつくことができなかった、ありがとう柊さん!


「私、怖いです。林田君の家に勝手に入り込む屑みたいな輩がいるなんて……」


 なんていい人なんだ、いつか結婚したいです。彼女と。


「こいつらやっぱり狂ってんなぁ……ん?」


「? どうした光牙」


「どうしたんですか光牙くん」


 光牙が目を納めて俺たちの背後をじっと見つめていた。


「……なんだあれ」


 なんだろうと思い俺も振り向く。


「な、なんじゃありゃあ?」


 ものすごい勢いで、何かが迫ってきている!!!!


 自転車に乗りながら、アイロンがけしてる俺らと同じ制服を着てる変な奴が!!!!


「オラオラ退け退け!! テメェの腹の上でアイロンかけちまうぜぇ!?」


「か、かわせっ!!」


 光牙の叫び声とともに、回避を試みる。


 俺は簡単に躱せる位置にいたから体を晒すだけでよかった。だが、同じ位置に柊さんもいたはずなのに、躱そうとしていない。


 突っ立ったまんまだった。


「……よ」


「柊さん! 何やってんの躱してよっ!」


 俺の声が届いていないのか!?


 ダメだ轢かれる……!








「わたしがマーキングしたTシャツと自転車のサドル、あんたなんかが座っていい場所じゃないんだよォォー!!!」




 





「あふぅん!!」





 強烈なライダーキックが、暴走エクストリームアイロンがけ小僧を粉砕した。


 追い討ちとして、柊さんがアイロンを顔の上に着地させた。ほのかな焦げる香りが香ばしい。


「……おい、光牙。あいつ村上じゃねぇか」


「村上? あいつは確か夢の中の住人じゃないのか?(『林』参照)」


「冗談に決まってんだろそんなこと! それより……気になることがあるんだけどさ」


「なんだ、オレは今すぐにもこの空間から逃げ出したいんだけど?」


「……なんで柊さん、俺の自転車とTシャツって分かったんだろ。俺より先に」


「……聞いてみたら?」


「怖いからいい」





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