林
前回までのあらすじ。
魔王が世界を滅ぼそうとしてるところに勇者が現れて妹を返せと叫ぼうとしたが実は昨日のカラオケで声帯を潰してしまっていた。
「妹をどこへやった……魔王サタン!」
「悪いなぁ……既に奴はこの地獄から解放されて新たな命を宿し人間界へと降り立った……感謝するんだな」
「フザケンナ! 妹から妹属性取ったら何が残るっていうんだよ! 俺はお前を許さない、ぶっ殺してやる!!」
「上等だ、ブチ殺してやる!!」
「「ウォォォォォォォォぉぉぉぉぉ!!!」」
そして、最後の戦いが始まる!!!
×××
「っていう夢を見たんだけど、どう思うお前ら」
「いや知らねーよ、お前の夢に興味なんてさらさらねーし」
そう答えたのは俺の友達二号の村上瑞樹。周りから陰が薄いと言われがち。ちょっと引いてるけど少し興味はあるみたいでウズウズしてる。
「いいじゃないか、勇者と魔王の最終決戦。そんなに熱い展開も他に無い。積み重ねで決まることだがな」
ノリノリで返してくれたのが俺の友達一号の松本光牙。同じ人間であることを疑うレベルの超人。こいつがテスト三位以下にいた覚えがない。
俺たち仲良し三人組は、昼飯を食べながらそんなことを話している。みんなして『なんでも部』の部員だ。こういうなんてことない物事を楽しめるのが俺たち。
「んで、なんでお前らにこの話をしたのかというとだな」
そしてここからが本題だ、今日こいつらとするくだらない話はここから始まる。
「一緒にこの夢の続きを考えて欲しいんだよね」
この言葉が、始まりの合図。
俺たちは水を得た魚のように、イキり始める。
×××
「実は魔王の後ろに更なる悪がいる展開はどうだろう」
村上がそう言うと。
「王道だな、でも妹が解放されてる以上この物語はなんかそういった王道からかけ離れている気がしてならない」
松本がそれに気になった点を付け加え。
「そもそも最終決戦ってプロット付いてた気がするからこれが最終決戦だ」
俺がシメる。
「ふむふむ、じゃあ敵を倒した後大団円になるか、それとも主人公が魔王と共に消滅するか、だな」
今度は松本がそう言うと。
「おお! 主人公消滅はいいと思う! 感動モノになるしな!」
村上が賛成し。
「よっしゃ、ラストシーンはそう言うことでいいな」
俺がノートに出てきた案を書き進める。
そうして俺の中にも物語が作り出されていく。
やばい、これ面白い。漫画にしようかな。
そう思うと、口にしたくなった。俺たちでこの作品、漫画にしようぜ! と。
「無理だ」
だが不覚にも心を読まれてしまったのである!!!!
「ま、松本ォ!? お前そんな心読スキル持ってたっけか!?」
「持ってなくてもわかる。冷静に考えら絵を描けるやついねーんだよオレたち三人にはな」
確かにそうだ、テンション上がって変に舞い上がってたけど、俺と村上は普通に絵が上手くないし、松本に至っては全てのキャラクターがピタゴラスイッチに出てくるフレーミーみたいな直線で描かれる。
「うーん……でもこの作品を俺たちの中で留めておくにはいかない。勿体無さすぎる」
「ぼくの案なんだが、ネット小説として投稿するのはどうだ?」
村上が良い提案をしてきた。確かに絵を描く必要も無いし、十分にありだな。
「でも林田が豆腐メンタルだからダメだ。コイツはすぐいじけて暴走するから作品叩かれた瞬間首吊るまであるぞ」
「失敬な……否定はしないが」
「じゃあこれは村上瑞樹、このぼ、ぼくが引き受けるということで良いかな!?」
そうだな、光牙にさせるのもなんか癪に触るし、ここは村上に任せよう。
「いやー、これなら書籍化待った無しじゃないか?」
俺のこの発言に松本がペッと唾を吐いた。
「ネット小説何冊あると思ってんだ。お前の夢物語が書籍化なんてそれこそ夢物語だわタコ」
「んなっ!? てめーいうじゃねーか! もし書籍化しても分け前お前にヤンねーからな!」
「書くのはぼくだけどね、林田」
「ようし、村上、俺たち二人で書籍化目指して頑張ろうぜ!」
「そうだね、松本なんかほっておいて、ぼくたちで印税をがっぽがっぽ稼いじまおう!」
二人揃ってオー! と叫んだ。気分は上々であった。
こうして3年の月日が流れた………
×××
「……っていう夢を見たんだけど、これからこの物語はどういった展開を見せてくると思う? 光牙」
「あぁ、多分無限ループオチかなってかそもそも村上って誰だよ」
「俺の架空の友達」
次回、連載終了!?