第六話
「ねえねえ、小津くん。」「なんだよ。」「話をしよう。あれは今から一年と…。2か月?だったか…まぁいい、私にとってはつい先日の出来事だが君たちにとっては明日の出来事だ。」「何やっているんだ?」「大丈夫だ。問題ない。」「はぁ…。」
エルシャダイより。
◇ 3年生 教室
「お嬢様、ここまでの動きをどう思われますか?」
「そうですねぇ…。小津海斗くんはさすがの行動力ですが、意外だったのは一年生の子ですね。」
「津野田優花ですか…。ここだけの話ですが彼女、中学時代は一時、小津と同じ中学にいたらしいですよ。それで、彼に認めてもらうために絶え間ない努力をしたそうです。」
「そうですか…。あの二人がぶつかったらどうなるでしょうかね。」
「きっと面白いと思いますよ。それよりも自分のクラスは良いんですか?」
「いいんですよ。本来でしたら折を見てリタイアする予定でしたから。でも、それをするのは二人の戦いが終わってからでもいいでしょう。」
「そうですね。」
白石美由紀はゆっくりとこの戦いを見守りながら、紅茶をすすった。
◇ 1年生 教室
「よし、これで残っているのは三年生が1チーム、二年生が1チーム、そして私たちよ。」
「ああ、だが、どちらから攻める?どっちも防御が強い。攻めるにしてもこっちは人数が…。」
「安心しなさい。私にいい考えがあるわ。」
津野田優花は一年生の意地を見せるためにここまで戦ってきた。戦い方はいたってシンプルだ。相手をすべて行動不能にする。『相手のリーダーを行動不能にすることができれば旗を獲らなくても勝利が可能となる。』津野田はこれに目を付けた。だが、こちら側の陣地の消耗はとても激しい。だから津野田は一つの案を考えた。
『全員、ここで待ちなさい。私一人でカタをつけに行くわ。』
そう、一人。これが津野田優花の最終策だ。
待っていなさい。絶対にあなたには負けない。小津海斗。
◇ 2年生 教室
俺はふぅ…。とため息をつきながら状況を整理した。ここまでは攻撃陣も防御陣もよく頑張ってくれている。だが、あと一つというところでほかのクラスに旗を奪われたりしてしまっていた。
「これは攻撃陣の見直しが必要かなぁ…。」
その時、校内アナウンスで残るクラスが三クラスになったという報告があった。
「残り…3つ。いや、俺たちがいるからあと2つ。そろそろ、このゲームも終わらせるか。」
俺はトランシーバーを取り出し、現在も防衛をしている防御陣のリーダーに問いかけた。
『もしもし、小津です。どーぞ。』
『小津か。とんでもねえものに出くわしてしまった。あいつはやべぇ。気をつけろ。』
『あいつ?どいつだ?』
俺は窓を見た。そして驚愕した。
「そ、そんな…。バカな。」
あれだけ組んでいた俺たちのクラスの防御陣が圧倒されている。しかも、一人で。
「あいつは…一体。」
それは戦闘にすべてを注いでいる津野田優花だった。
◇ 3年生 教室
「お嬢様、津野田優花が小津海斗のクラスへと先陣を切りました。」
「そうですか…。そろそろ、頃合いですね。」
「といいますと?」
白石美由紀は立ち上がり、クラスに向かっていった。
『皆のもの、今が先陣を切るときです。二つが混線しているとき、必ず、我らに勝利あれ!』
「「おおおおお!!!」」
小津海斗、津野田優花、あなた方は私を怒らせました。その報いを受けてもらいましょう。
◇ 2年生 教室
「あいつは…。でもなんでこんなところに…。」
「ねえねえ、小津くん。」
「なんだよ。」
「今さ、三年のほうを見てきたんだけどなんかすごく盛り上がっているよ。これさ、確実にこっちに来るよね。」
「ちっ、余計なものを連れてきやがって…。だが、まあいい。準備はできている。」
俺は御厨の肩をドンと叩くといった。
「行ってこい。こういう時のためにお前を用意させたんだ。」
「わかった!遠慮しなくていいんだね」
「もちろん、ぶっ飛ばしてこい。」
「了解!!」
御厨は勢いよく三年生のほうへと駆け出して行った。
俺は誰もいなくなった無人の教室に呼び掛けた。
「さてと…。なぁ、いつまでそこにいるんだ?それとも俺がこうでもしないと出てこれないとでもいう気か?」
その声に反応したのか掃除用ロッカーから一人の女子生徒が出てきた。
「よくわかったわね。私がここにいるって。」
「簡単な話だ。まず、お前は俺が仲間と連絡を取っているうちにこの教室へと忍び込んだ。そして、俺たちの行動を伺いチャンスがあれば旗を持って回収。とまでは考えていた。が、ここで予期せぬことが起きた。俺たちがなかなか教室から移動しない。困り果てたお前は自分の影武者を用意した。さっき校庭でやっていた騒動はお前の影武者とお前のクラスでできたでっち上げの状態。俺がそれに気づいたのはトランシーバーで連絡をしたとき、明らかに声が違っていた。ま、その前にやられた陣営に俺の知らない人たちがたくさんいたからな。これは…。と思ってわざとお前たちに連絡をするようにした。ダイヤルが変わっていたからすぐに分かったよ。あとは簡単。お前をおびき出すために三年の先輩を使って御厨を退出。そうすることでお前と今この状況にいることができるっていうわけだ。まったく、誰に似たんだか。」
「答えて、あんたがこのクラスのリーダーなの?」
「…。無視か。だったらどうする?」
「無論、あんたをここで倒す。」
ったく、本当に誰に似たんだか…。
俺が気づいた本当の理由、それは戦い方が昔の俺そっくりだったからだ。
俺はため息をつき、目の前の女子生徒に向けて言った。
「一応、名前を聞いておこう。お前は誰だ?」
「あら、人に名を聞くときはまず自分から名乗るのが筋ではなくて?」
この野郎…。面白いことを言ってくれるじゃないか。
「俺の名前は小津海斗。お前は?」
「私の名前は津野田優花。小津海斗、あんたをここで倒す!!」
津野田優花、その意思は受け取った。だけどな…。
俺はこのクラスマッチ、負ける気は全くしない。
「ねえねえ、小津くん。」「なんだよ。」「子供作りたい?」「ブッ!お前は…。何を言っているんだよ。いま、本編は良い所なのに。」「いや、ふと思ってさ。」「そういうことを平然と言うものじゃない。それに俺はお前と付き合っているわけじゃないのに。」「男だったらシンジ、女だったらレイと名付けよう。」「なにいってんだこいつ…。」
ヱヴァンゲリヲンより。
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