第一話
「ねえねえ、小津くん。」「なんだよ。」「いよいよ本編が始まるね。」「そうだな。」「小津くんのあんな所やこんなところが見れるのか…。」「どういうことだよ。」「さあ?詳しくはこの先に進んだらいいんじゃない?」
◇ 教室にて
「えー、それでは今日から新しくこのクラスの一員になった。小津海斗くんだ。小津くんは両親の転勤で新潟からこっちへ来た。分からないことだらけだと思うからみんな仲良くしてあげろよ。じゃあ、小津くん、自己紹介を。」
「あー、はい。えっと、小津海斗です。よろしく。しばらくの間はこの場所にいると思いますので…。えーっと、ほかには…。」
俺は何かのネタ探しに周囲を見渡した。すると二つ、空席ができているのを発見できた。「先生、あの2つの席は何なんですか?ひとつは僕のだと思ってももう一つは?」
「ああ…。小津くんには窓際のほうへと座ってもらう。もう一つの席には…。」
その時、教室のドアが開いた。
「たっだいまーー!!」
うげっ、この声は…。
その声はさっき、俺が最も聞いた。そして一番聞きたくない声だった。
「あ!君はさっきの転校生くん。私、御厨 穂波。よろしくね。」
「あ、ああ。よろしく。」
俺が簡単に会釈すると先生が言った
「御厨、席に戻れ。お前の隣に小津くんが入ってもらうから。」
「ホント!?いやったぁー。」
御厨はご機嫌なようで自分の席に座った。なんでこいつはこんなに上機嫌なんだよ。
「さてと、それじゃ、小津くん。御厨の隣へ。」
あー、そうなるよね。しょうがないけど。
「はい。えっと、改めて、俺は小津海斗。よろしく。」
俺はそういうと御厨の隣へと座った。
「それじゃ、授業を始める。小津は御厨のを見せてもらえ。」
「はい。」
先生は何事もなかったかのように授業を始めた。
「ねえねえ、小津くん。」
「なんだよ。というか教科書見せろよ。」
「私、教科書持ってきてないよ。」
「アホか。それでどうやって授業受けるんだよ。」
「努力値。」
お前はRPGのキャラクターか。
「わかった。前の人に見せてもらう。」
俺はそういって、前の人の肩をたたいた。
「あの~。このバカが教科書を見せてくれないので見せてくれもいいでしょうか。」
すると、前の人は優しい笑顔で答えた。
「構いませんよ。」
「ありがとう。」
俺はこの時間を前の人に教科書を見せてもらいながら、授業を受けた。
◇ 休み時間
休み時間だ。この学校は幸い授業時間が45分しかない。そのため、とても時間がたつのが早いと感じた。俺の席はというと転校生で注目を浴びているのかものすごい数の人がいる。
正直、やめてほしい。この状況を何回も経験しているから。
「ねえねえ、小津くんは新潟にいたんだよね。」
「そうだよ。」
まずは、女子の質問だ。
「新潟と長野、どっちが過ごしやすい?」
「さあ?まだ、こっちに来て日が浅いからね。のんびり考えるよ。」
「そうだね。」
はぁ…もうほんとにやめてほしい。
「なあ、小津。お前は部活は入らないのか?」
今度は男子だ。男子のことと言ったら部活以外はない気がする。
「そうだなぁ…。今入りたいっていう部活がないからなぁ…。いいのがあったら考えるよ。」
「そうだな。」
このやりとりもすでに多くの人間とかわした。
「小津くんは彼女とかはいたの?すごいモテそうだけど。」
女子の質問と言ったらこれなんだよなぁ。
「特にいないよ。でも…。だからさ、気になる子がいたら教えるね。」
「きゃーーー。」
はぁ…これでいいか。もう、めんどくさい。
「小津、先生がお呼びだ。」
「はいよ。」
俺は少々逃げるようにして先生のほうへと向かった。
「先生、失礼します。」
「おう、小津くん。来てくれたか。」
そこにいたのは俺の担任の先生ともう一人どこかで見た記憶のある先生がいた。
「教頭、彼が小津 海斗くんです。」
「あっ!今朝のたしか御厨を追いかけていた先生。えっと…。九条先生。」
「おや、私のことを覚えてくれるとは嬉しいね。」
正直、今思い出したとは言いづらいな。
「あはは…。それで、教頭が僕に何の用ですか。」
教頭はコホンと一つ咳払いをすると俺に向けて言った。
「小津くん、実は君にお願いがあるんだ。」
「はぁ…。」
俺は嫌な予感を感じ、教頭の次の言葉を待った。
◇
「はぁ…。なんて大変なものを引き受けてしまったんだ。」
俺はトボトボと歩きながら教頭に言われたことを思い出した。
『小津くん、君はこれから御厨の補佐をしてもらいたい。彼女は見ての通り、やんちゃで人気者だからね。少しばかり大変なこともあるだろうけど、ぜひ君に努めてもらいたい。』
『はぁ…。』
「今思い返せば、俺はとんでもないものを…。くそう、こうなったのは全部あいつのせいだ。」
俺はどこにぶつけてもおさまることのない怒りを壁にぶつけた。
「あれ?小津くん、何やっているの?」
その声は俺をここまでイライラさせる現況の奴の声だった。
「ああ、お前か。どうした?」
「次の授業が始まるから呼ぼうと思って。」
見ると、もう次の授業が始まるところだった。
「そうか、じゃあ行くわ。どうせ、お前も来るだろ?」
「うん。先に教室に行っているね。」
「ああ…。寄り道するなよ。」
「うん。」
明らかに疲れている俺を見たのか、御厨は言葉を少なくして教室へと去っていった。
「はぁ…。」
今日で何回目だろうか…。俺はため息をつき、天を始めて恨んだ。
ちくしょう…。
「なにが、あんなところやこんなところだよ。普通なことじゃないか。」「あれれ~?おかしいなぁ。」「さては俺をハメたな。」「えへへ。」「なんか俺が恥ずかしいから今日はこれ以上話すな。」「無理!」
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