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侵入者

「ミーテ!こっち、こっち!」

急いで食堂に着くと、なんとミネルバとイスカが、食堂のテーブルでミーテを待ってくれていた。テーブルには三人分の料理が手付かずで置かれている。3つとも同じメニューで、サンドイッチだ。ただし、1つのサンドイッチがパン3枚で作られている。ハムやらレタスやら卵やらと具沢山だ。

「二人とも、先に食べてていいのに。」

「水くさいこと言わないでよ。待つに決まってるでしょ。友達なんだから。」

「そうそう。あ、ミーテの分、イスカが選んじゃったけど、、、。」

「いいよ、いいよ。寧ろありがとう。」

席に着き、ミーテはサンドイッチを、手ではなくナイフとフォークを器用に使って食べ始めた。

かじりついた方が楽だし美味しいと思うんだが、駄目なんだろうか。

ミネルバとイスカも同じように食べている。

ふと、ミネルバが心配げな顔になった。

「ねぇ、ミーテ。急にお昼休みルイス様とどこかへ向かっていたけど、何かあったの?」

隣のイスカは対称的にキラキラとした瞳で訊いてくる。

「分かった!告白でしょ?ルイス様に告ったんでしょ!」

ミーテは曖昧な笑みを浮かべて首を横に振った。

「ちょっと大事な事で相談を。」

「大事な事って何、何?」

イスカが食い気味に突っ込んでくる。

「実は、、、二人とも内緒にしてね。」

ミーテは声を潜めた。

「ルイス様からの贈り物を断っていたの。」

「贈り物、ってまさかルイス様がミーテに?」

「うん。」

ミネルバの顔が暗くなった。

「もしかして、もしかしてだけど、ミーテ。ルイス様にストーカーとかされてた?」

「え!?ミネルバ、知っていたの?」

「確信は無かったけど、よく図書室に行ってテーブルに座るとき、何故かいつもミーテの後ろの席にルイス様がいて、気のせいかなって思ってたけど。気のせいじゃなかったのね。もっと早く教えとくべきだった。ごめんなさい、ミーテ。」

「ミネルバが謝ることじゃないわ。気にしないで。」

「ミーテってモテるね。」

イスカが、一瞬だけ苦虫を噛み潰した表情をしたが直ぐに元の明るい顔に戻った。

今の、、、なんだ?顔の切り替えが早すぎる。

「そ、そうかな。」

ミーテが曖昧に濁す。イスカの一瞬の顔の変化に、気付いていないようだ。

「ミーテってどんなタイプの人が好き?」

「えーっと。優しくて、努力家で、暗めの蜜柑色の髪と目をしてて。」

うん、バッチリ、クッキリ、ジョナサンの事だな。

9ヶ月以上も連絡がとれていないのにミーテのジョナサンに対する想いは消えていない。本当に一途だな。

ジョナサン、もしもミーテの事を忘れていたら俺は承知しないぞ。

多分ジョナサンなら大丈夫だとは思うが。

でも秋の空の様に移ろいだらどうしよう。

ルイスは移ろいで欲しいが、ジョナサンは移ろいで欲しくない。俺の勝手な願望だな。

3人はお互いの好きなタイプを言い合った。

ミネルバの好きなタイプは優しくて賢くて背が高いひと。

イスカの好きなタイプは気品があってイケメンで金髪碧眼で、、、多分エドワード王子のことだと思う。

サンドイッチを食べ終ると、3人とも教室に走った。






その日の夜。

深夜を少し過ぎた時間。

ミーテの部屋のソファで熟睡していた俺の鼻にふと甘い臭いが、かすった。

重い瞼を開ける。

ソファから身を起こして辺りを確認する。

今日は新月なのか、部屋は真っ暗だ。

なんだこの甘ったるい臭いは?

感覚を頼りにソファからソッと下りると、嗅覚を頼りに臭いを追った。

なんか、頭が少しふわふわする。この感じは、ビールを飲んだ時に似ているな。

臭いを辿ると、ミーテのベッドの方からだった。

見ると、ベッドの横に黒い人影を見つけた。

「ワン。」(ミーテ?)

ガタッ

人影は驚いたように何かを落とした。

甘い臭いで分かりにくかったが、近づいて総毛立った。

こいつ、ミーテじゃない。

「ワンワンワンワン!!!!」(てめぇ、何もんだ!!)

あらんかぎりの声を振り絞る。

人影は無言で落とした物を拾い上げた。

そういえば、ミーテは!?

ミーテの匂いは有る。だが、俺の吠えた声が聞こえている筈なのに匂いに動きはない。

ミーテの方に向かう前に人影の体臭が此方に近づいて来た。

俺は素早く走り、ベッドの下に身を突っ込んだ。


人影は、今度は窓の方へと向かう。バタンッと窓を開く音がした。

臭いが遠ざかっていく。

もしかして、窓から外に出たのか!?

何てこった!!

窓には内側から南京錠をしていた筈なのに。


そうだ!それよりもミーテ!!

ベッドの下から這い出し、ベッドの薄い天蓋を噛んでひっぺがす。

ぶわっと甘ったるい匂いが出てきた。

どうやら匂いの源は、天蓋の中に籠っていたようだ。

ミーテはスヤスヤと眠っている。

穏やかな寝息が聞こえた。

「ワン!」(ミーテ‼)

駄目だ、起きない。

甘ったるい臭いは段々と薄まっていく。

窓は開いたままだ。お陰で部屋が換気され、臭いが去っていく。

「ワン!ワン!ワオーーーーン!!」(起きろーーーー!)

久しぶりに遠吠えをしてみたらミーテはゴソリと寝返りをうち

「うるさ~ぃ。」

と呟いて再び眠ってしまった。

、、、なんか、緊張の糸が切れたよ。

ま、まぁ、深夜過ぎだしな。

とりあえずミーテは無事そうなので、俺は朝までそっとしておくことにした。

だが犯人がまたやって来たら怖いので、今日はミーテのベッドの側で番をすることにした。

また寝ずの番である。

犯人は何を盗んだんだろう。

窓から見える空が紺色から水色に変わっていく。

部屋の中がようやく見えるようになって気づいた。

そういえば、ベッドの側の鍵付きの箱が無い。

ミーテがジョナサンから貰った大切な腕時計が入っているあの箱が、無くなっている!!


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