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ミーテ視点、夏の別荘終了

ミーテ視点



正直エドワード王子が何を思ったのかは分からなかったけど、少なくとも。

「自然にそのまま元気なのが一番です‼」

これは確かな事だと思う。


トマトが何故魔動物の蝙蝠を助けようとしたのかは最初分からなかった。

今思えば普通に可哀想だったからだろう。

だけど、これがきっとフラグを立てない方法なんだと思う。

今日の為にノートを作成したけど、トマトのお陰で船に穴が空いて王子に助けられるイベントと、洞窟で魔動物に襲われるイベントが跡形もなく無くなってしまった。良かった、良かった。

このままトマトに委ねといたら良いかな?

「良い、、、よね。」

「ワン?」

トマトが不思議そうに足元から見上げてくる。

フワフワの頭を撫でてやると嬉しそうに目を伏せた。


「では、帰りましょうか。」

エドワード王子が振り返った。

私は頷き、トマトを抱えて、助走を付けて跳び、崖の上に着地した。

何故私が魔法を使わないのかというと、なるべく体を動かしたいからだ。マーリン学長から私が夢遊病だと聞かされたとき、対策としてよく運動するように言われた。夢遊病が起こるのはストレスや運動不足が原因だとか。

確かに山での生活と比べて、ここでの生活は日々体力が有り余る状態だった。その日からこっそり腕立て伏せや腹筋、高跳び等をこなしている。

因みに高跳びは夜にこっそり学園や屋敷の敷地内で、枝と枝の間や屋根と屋根の間を行き来したりしている。



私が崖に着地した横で、魔法で浮いて崖を越えたベレニケ様がくらっと体勢を崩した。

「だ、大丈夫ですか?」

慌てて支えると、近くの兵士が腰に下げている鎖と、布で簡易担架を素早く作り、ベレニケ様を横たわらせた。

「大丈夫ですか?ベレニケ。」

エドワード王子も心配そうに覗きこむ。

「ええ、大丈夫ですわ。私としたことが、少し魔力を使いすぎましたわ。」

「それは、いけない。早く休ませなければ。」

エドワード王子は兵士達を急かし、洞窟の出口へと向かった。

ベレニケ様を運ぶ兵士達の後ろを私、トマト、エドワード王子と続く。

エドワード王子が私の横に並んだ。

「ミーテ、貴女に一つ質問が有ります。」

小声で話しかけてきたエドワード王子に対して、何だろうと、見上げるとエドワード王子の顔はなぜか少し悲しげだった。

「ジョナサン、とは貴女にとってどの様な人物なのですか?」

背筋が、、、凍った。

何故エドワード王子がジョナサンを知ってる?

「い、一体、なんのことでしょうか?」

振り絞った声は震えてしまった。

「実は貴女はよく夢遊病で私の所にいらしていたのですよ。その際よく私をジョナサンと呼んでいまして。」

、、、。

嘘ぉぉぉぉぉー!

まさか、私が夢遊病で動いている内にエドワード王子に会っていたってこと?

そんな、馬鹿なことって。

いやでもエドワード王子が冗談を言う性格では無いことは知っているし。

「えっと、あの、、、」

どうしよう。誤魔化さないと。

「お、幼馴染みです!」

「恋人では?」

「はい、恋人で、、、あ。」

思わず口が滑ってしまった。

「成るほど。やはりそうなのですね。」

うわわわわわ。

「貴女に婚約者はいない筈ですが、一体どこで。」

「出口が見えてきました!エドワード王子!」

こんなあからさまな会話の遮り方をして、後で怒られないだろうか。

でも取り合えず会話をなんでもいいからぶったぎりたい。

いまの頭が混乱している状態で会話したらボロがぼろぼろ出てくるに決まっている。

洞窟の出口の砂浜の横には金ぴかの馬車が2台。木製の馬車が2台有る。ここまで乗ってきた馬車だ。

今回は馬車で来たのだ。

「ベレニケは私が魔法で運びますので、皆さんは馬車で帰ってください。」

恭しく兵士達が頷き、私達は馬車に乗り込んだ。


別荘に着いたとき、馬車から出たトマトが何を思ったのか海岸に向かう石畳の階段に向かって猛烈に走っていった。

慌てて追いかけようとしたが、割りと直ぐに戻って来たから、何だろうと見ると、トマトは大きな貝殻をくわえていた。

「もしかして、くれるの?」

手を出してみると、トマトは少し迷った後、私の手の平に貝殻を乗せた。

あ、もしかして、トマトが自分用に持って帰るつもりだったのかもしれない。でも取り合えず貰っておこう。

くわえさせたままだと、顎が疲れちゃうから。

屋敷に帰ったらトマトが持ちやすいように加工してあげよう。


この後、ベレニケ様の体調が悪化し、イスカの体調も優れず、更にはスチュワートが再び無断で洞窟に向かおうとしたため、別荘での休暇は中止され、次の日は各々自分の屋敷に帰宅した。


帰宅した後、私は直ぐにマーリン学長に手紙で呼ばれていることを知った。

取り合えずトマトを引き連れて、暑い中エマリカ学園の学園長室を訪れると、ソファに座るように促された。トマトと共に座った私達に、マーリン学長は紅茶を用意させた。

マーリン学長は分厚い【国境に出現した怪物についての報告書】と書かれた書類を持ってきた。

「今日呼びだしたのは、3日前に現れた正体不明の怪物についてと、恐らくこれからそなたに迫る危険について知らせる為じゃ。」

「怪物、ですか?」

「左様。その怪物には、かつて魔王が使っていた禍方に似たものが使われとるようじゃ。」

「え!? 」

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