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洞窟の桜の木の謎

「これは僥倖でしたね。まさか偶然入った洞窟で絶滅した筈の植物と、更に魔動物を捕らえることができるとは。」

エドワード王子が前に進み出て蝙蝠のトトに近づく。

シーザーは苦渋の表情をしてギリッと牙を噛み締めた、エドワード王子の手前、トトを助ける動作がとれないのだ。

トトが連れて行かれてしまう!

足をバタつかせてミーテに俺を下ろすように伝えた。

「トマト、どうしたの?」

地面に下ろしながらミーテが訝しがる。

俺は走ってトトに絡み付いている蔦に噛みついた。

グギギギギギッ

ブチブチブチ。

「こらこら、何してるの!」

ミクラーが俺の首根っこを掴かみ、ひょいっと持ち上げる。

あ、あと少しだったのに。チクショウ。

ベレニケが再び魔力を流して蔦が修復される。

あー。どうしよう。

その様子を見ていたミーテが前に進み出た。

「あの、エドワード王子。無礼を承知で言わせていただきます。この蝙蝠をどうか、離して頂けませんか?」

すると、ウォーゲルがミーテを睨んだ。

「何を言っているんだ!?この蝙蝠は此方に攻撃してきたのだぞ。そして魔動物はとても貴重な存在なのだ。国益としても重要な存在だということは君も知っているだろう。」

「でもそれは、あくまでその魔動物が人間になつく状態でなければ意味を成さないのでは? この様に完全に野生で大人の状態であれば従わせることは不可能に近いかと。」

そうだそうだ!言ってやれミーテ!

「不可能であれば交渉し、更に不可能であれば殺せば良い。魔動物とはそういうものだ。」

シーザーからも聞いた方法だけどえげつないな。

「魔動物にだって意思はありますし、従うか従わないかを決める権利位あっても良いのでは?」

「魔動物の権利を優先していては、国の為にならない。国力を高める為に必要なことだ。」

「たかが一匹位、別に見逃しても。」

「一匹一匹がとても貴重なのだ。探すのにどれだけ苦労すると思っている。見つけた先から集めていかないと集めることが出来ないだろう!」

「さっきから国力、国益って言ってますけど。では、この蝙蝠は本当に国益や国力になりますか? ならないでしょう! こんなに反抗的なんですよ!」

なんか、だんだん議論がヒートアップしてきたような。

「ウォーゲル様は頭が凝り固まっていらっしゃいますね!」

「とちくるっている貴方とは違います‼」

もはや只罵倒し合うだけになってしまった。


一瞬洞窟の天井が動いた気がした。

俺が見上げるのとほぼ同時。

バッサアアアア!!!

一斉に天井から真っ黒な大軍が羽ばたいた。

なんと、蝙蝠の群れだった。

今洞窟の本来の天井の色、ちょっとグレーっぽい色がチラチラ見える。

黒い天井だと思っていたのはビッシリいた蝙蝠だったのか!

ってか、関心している場合ではない!

確実に此方に突撃して来ている。

「トゥットゥッ!」(トトを離せ!)

「チチチチ!」(今助けるから!)

蝙蝠達が一斉にトトの捕まっている蔦に爪や牙で攻撃し始めた。

「きゃあ!」

ベレニケの顔面に一匹の蝙蝠が張り付いてきた。

「ベレニケ様!」

ミーテが蝙蝠をひっぺがす。幸い爪は立たれなかったのでベレニケの顔に怪我は無かった。

だが、虚をつかれたベレニケは薬指の上に置いていた蔦の生えた種を放り出してしまった。

蝙蝠達はトトを蔦ごと天井に連れていく。

「このっ!」

ウォーゲルが薬指を構えた。

「待って!」

ミーテが慌てて止めに入ろうとしたが、ウォーゲルが呪文を唱える方が早かった。

「スバトオノホ!」

ウォーゲルの薬指から炎のビームが放たれる。

「スバトズミ」

スチュワートの声が聞こえた。

スチュワートの声、、、え?

バシャァ!!

スチュワートの薬指から水の柱が勢いよく噴射された。

蝙蝠の軍団にぶつかりかけた炎のビームに、水の柱が当りジュワァ~っと煙が立つ。

「何故邪魔をするんだ、スチュワート!」

呆れたようにスチュワートがため息を吐いた。

「蝙蝠達に当たったらこの木が枯れるじゃないか。」

「な、何を言っているんだ?」

戸惑うウォーゲルに対し、エドワード王子は少し考える素振りを見せた。

「ウォーゲル、もういいですから、下がりなさい。」

エドワード王子の言葉にウォーゲルは渋々蝙蝠達から距離をる。

蝙蝠の軍団は天井の方へと集まっていた。特に攻撃はしてこない。じっと此方の様子を伺っている。

エドワード王子がスチュワートに視線を移した。

「スチュワート、説明してください。」

スチュワートはズレた眼鏡の位置を直した。

「まず、ここの洞窟の土は本来栄養がない。だが、ここの土だけは違うんだ。サクラの木の根本を観察したら白っぽい粒が堆積しているように見えた。恐らく蝙蝠の糞だろう。

ここの蝙蝠達はこの木の側で糞をする習性があるんだ。

蝙蝠の糞は蓄積して年月を得るとリン酸を多く含む良質な肥料になると言われている。

もしここの蝙蝠達の数が減ると、長い目で見ればサクラの栄養が減ることに繋がるんだ。」

へぇぇ~。

「成るほど。ならあの蝙蝠は諦めましょう。」

ミクラーが掴んだ俺を下ろしながらエドワード王子を仰ぎ見た。

「いいんですか? 王子。」

「今回ばかりは特例ですから。この美しい花が見れなくなってしまうのは惜しいですから。

そう言うことですよね? ミーテ。」

あ、ナチュラルに呼び捨てにしてらっしゃる。

てか、そう言うことってどういうこと?

「えっと、あ、はい。ありがとうございます!エドワード王子!!」

ミーテ、絶対わかってないだろう。

ミーテはぐっと拳を握り、

「自然にそのまま元気なのが一番です‼」

と言った。

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