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洞窟で出会う


外は朝日がギラギラと照りついているのとは対照的に洞窟の中は真っ暗だった。とてもヒンヤリとしている。たまにぬるい風が香った。

ヒタッ、ヒタッ。

洞窟の天井から水滴が落ちる音が響く。

俺達は今洞窟を進んでいた。出口の光は既に見えないほど歩いてきている。

俺達というのは俺、ミーテ、狼のシーザー、エドワード王子、スチュワート、ベレニケ、ウォーゲル、ミクラー、そして兵士達である。何故に兵士10名も付く仰々しい一行となってしまったのかと言うと、執事のセバステが

「王子に何かあれば私は生きて行けません!!!」

と心配したからだ。

因みにイスカは何故か寝込んでしまい、ミネルバが今、付き添っている。

ミーテも付き添おうとしたら、エドワード王子に

「付き添いが多すぎるのは良く有りませんから、共に行きましょう。」

と半ば強引に連れてかれた。


「凄い、凄い。これは相当古い地層から出来ているぞ! 殆ど上に新しい地層が乗っていない! 少し昔の生物がいるかもしれない!!」

何故かスチュワートは魔法で指から出した光で、洞窟の壁を観察して興奮している。

「地図では知っていましたが、やはり実際に見てみるものですね。」

エドワード王子はミーテに微笑みかけた。一瞬金の薔薇が咲き誇った様に見えた。

美しすぎる笑みは時に幻覚を見せるんだな。始めて知ったよ。

「そ、そうですね。」

ミーテは曖昧な笑みで答える。

大丈夫か、ミーテ? 王子の光で目がやられてないか?

「それにしても歩きにくいですわ。」

ベレニケは少し疲れた表情を見せた。

この中で一番体力が無いのは恐らくベレニケだろう。

ミーテはジャンプ力とかとんでもないからなぁ。

今列の先頭を歩いているのはスチュワートだ。完全に後ろに俺達が要ることを忘れて興奮して先にズンズン進んでいる。冷静沈着な普段のキャラとは違って、異様な熱に狂った感じでちょっと怖い。

兵士は5人と5人で各々エドワード王子達の前と後ろに別れて歩いている。

俺はミーテの直ぐ後ろを歩きながら、あの蝙蝠を探していた。

できれば蝙蝠のトトにはこのまま会わずに帰りたい。


洞窟での灯りは、スチュワートの様に魔法で出したものか、兵士達の持っているランプしか無い。

ふと、向こうまで行っていたスチュワートがうぉぉぉ!!っと叫んだ後で、此方に戻ってきた。

「誰かロープを持っていないか?」

「何故必要なのですか?」

「あー、そうだな。見た方が説明するより早い。こっちに来てくれ。」

スチュワートにせっつかれて一行は洞窟の奥に向かうと、洞窟の中に崖が有った。

「成るほど。そういうことですか。魔法で飛んで下りれば良いのではないですか?」

「序盤で 魔力を6割使ってしまった。エドワード王子。」

頼む、この通りだっと手をあわせて頼み込むスチュワート。

まさかの始めにずっと使っていた指に光を灯す魔法で魔力切れおこすなんて、、、。

「ロープではなく鎖なら持っていますので、それを伝って下りましょう。」

兵士の一人が、ちょっと長めの鎖の先にトゲトゲのボールがついた物を腰から取り出した。

え、それ、武器じゃね?

振り回して使う系じゃないか?

「私が抱えて下りましょうか?」

ミーテの提案に兵士は目を白黒させた。

普通思わんだろうな。まさか、この少女が、五階建ての建物から着地できるほどの脚力を有しているなんて。

「いや、俺はこの鎖で下りる。」

スチュワートはそう言うと近くの岩に鎖とトゲトゲボールを巻き付けてさっさと降りていった。

王子達も次々に唱えて魔法で崖の下に向かう。

ミーテが俺を抱えた。

そしてピョーンと跳んだ。

魔法使わんのかーい! 皆ビックリするだろう!

因みに兵士達は魔法が使えないらしく、トゲトゲボールの鎖を各自取り出してスルスルと下りていった。



スッチャッ!

一番早く崖下にたどり着いたのはミーテだ。

そりゃそうだ。ほぼ落下に近いのだから。

目の前をみて、ミーテは絶句した。俺もミーテに抱えられながらその光景に言葉を失う。


薄紅色の花びらが舞っていた。


「こ、これは、、、。」


掠れた声で呟いた。



俺達の前には4本の桜の木が薄暗い光の中で映えていた。

見上げると洞窟の天井に裂け目があり、そこから僅かな光が降り注いでいる。


「おや、これは見事な美しい木ですね。」

降り立ったエドワード王子が呟いた。

「まあ、綺麗ですわ。何と言う木なのでしょう?」

え、知らないの?

そりゃそうか。この世界はヨーロッパっぽいし。

「ガゥ。」(これがトトの言っていたやつか。)

魔法で降り立ったシーザーが呟いた。

「よっこらせっと!」

鎖で下りていたスチュワートがようやくたどり着き、桜の方を振り向く。

「おお!!!!これは凄いぞ! 大発見だ!」

途端に目を輝かせた。

「スチュワート、この木が何か知っているのか?」

ウォーゲルの問いにスチュワートは生き生きと答えた。

「恐らく200年前に絶滅したとされる植物と形がそっくりだ。サクラ、という木だな。まさか、こんな色をしているとは。」

へ?

200年前に絶滅!?

スチュワートは指を口許に持っていって考え込んだ。

「なぜ、こんな洞窟で生き残っているんだ? 水は有るにしても、土の栄養は洞窟なら乏しい筈。」


スチュワートは桜に近づいた。


「トゥットゥッ!」(来んな!)

バサッ

黒い羽がスチュワートの顔面すれすれを飛んだ。

あ! 蝙蝠のトトだ!

ぱっと飛び退くスチュワート。

するとトトは空中で静止して、小さな片足を此方に向けた。

「トゥットゥットゥットゥッ!」(シガロコンフ)

あ、ヤバイ!魔法なんかエドワード王子の前で唱えたりしたら。


空中で留まっているトトの前に、まん丸い岩がパッと現れた。

大きさは直径一メートル程。

その岩が猛スピードで此方に向かってくる。

ウォーゲルとミクラーが前に出た。

「ベカワイ!」

ウォーゲルが唱えた瞬間、ウォーゲルの薬指から、俺達を包むようにドーム状の岩壁が出てきた。

向かってきた丸い岩はそのドームの壁に当たって砕けた。

「ウロノズミ!」

ミクラーの呪文で薬指から水の球体が現れ、トトの方へと飛んでいった。トトは慌てて逃げようとしたが、それよりも水の球体が包み込む方が早かった。

水で満たされている球体の中でトトはもがき始める。息が出来ないのだろう。溺れている。

ベレニケがポケットから何かの種を取り出した。

「ルトメラカタツ。」

ベレニケが唱えたとたん、薬指の上に乗せた種から、芽が出たかと思うと、あっという間に蔦の様な植物が伸びて、水で囚われているトトの方へと向かった。

そのまま蔦は水の球体の中に入り込み、中で暴れているトトを縛る。

「ミクラー、ベレニケが捕らえてくれましたから魔法を解除しても良いですよ。」

エドワード王子に言われたミクラーは薬指を下ろした。

するとバシャッと音がして水の球体は弾け、消えた。


後に残されたのはベレニケが出した蔦に絡めとられて動けなくなったトトであった。


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