過去に囚われた Heavenly Maiden②
これ以上ほっとくと彼女のゲームのうんちくが止まらなくなりそうなので、俺は話を少し切り替えた。
「それにしても、彼氏さん何で嫌いなんですかね? 彼氏さんの生年月日と名前を教えてくれませんか? 占いましょう。これは料金はいりませんから。」
「いいんですか?ありがとうございます!1■■■年★月★日、名前は■■▽▽です。」
「ふむふむ」(個人情報GET)
俺は手を水晶玉にかざした。足元で名前と生年月日を占い師専門ソフトに入力する。
「おやおや、彼氏さんはずいぶん火の気が強いですね。あまり融通がきかないタイプでしょう。それに少しプライドが高い。」
「そうなんです。私の趣味がダサいとかそのくせ自分の好きなものを私に押し付けてくるんです。この前なんか筋トレグッズを進めてきて。」
「それは大変でしたね。」
「私、どうしたらいいのでしょう。」
「そうですね、彼氏さんは火の気が多すぎるので土の気で抑えるといいと思いますよ。例えばこの。」
俺は机の下から2つガラス細工のアクセサリーを取り出した。
「この2つは土の気を司る☆神の★神社で一度清められ土の気をふんだんに含んだ水晶です。お手にとってみてください。」
客が恐る恐るそのアクセサリーを手にとった。
「どうです?土の気が感じられるでしょう?、、、段々手のひらが温かくなってきたでしょう。」
「そうですね。確かに。あのこれいくらくらいなんですか?」
「1つだと一万六千円2つセットなら三万円ぐらいですね。」
「三万円、、、。」
「このままだと彼氏さんは水の気を持つあなたから離れていくかもしれません。火は水を避けたがりますから。でもこの水晶は土の気なので彼氏さんとあなたの間を橋渡ししてくれますよ。」
「、、、これ買います。」
俺はガラスのアクセサリーを包み客に手渡した。
俺はその後そのゲームを調べ映画のネタバレをサイトで検索した。
【過去に囚われた Heavenly Maiden】はなかなか大人気のようだ。主に女子に。
内容は、魔法を使える近世の都市が舞台の乙女ゲーム。
引っ込み思案な主人公ミーテは体内の魔力が膨大なため魔王に狙われ、結界の強いエマリカ学園に転校生として入学。
そこで四人の攻略対象(王子、保健医、秀才、癒し)と出逢い波乱万丈な学園生活を送り、最後は魔王を倒しハッピーエンドを迎える。
あれ、ミーテ? そういや薬指から魔法みたいなの出してたよな?
突然目の前が歪んできた。
そうか、思い出した。
今までの客とのやり取りは俺の過去の会話だ!
突然目の前に俺の兄弟犬と母犬が現れた。
こちらをじっと見ている。
そういや兄弟達はどうなったんだ? なんで俺助かったんだ?
段々犬達の目がどんどん近づいてくる。
俺は悲鳴を上げた。
「ワン!」(ギャーー!)
俺は本当に目を開けた。
ログハウスの木の壁が見えた。
朝日が窓ガラスから差し込んでいる。俺はフカフカの毛布にくるまれていた。