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海辺の別荘

強い日差しが降り注ぐ中、馬車はパカラッ、パカラッと駆けていく。

俺とミーテは今、エドワード王子が寄越した迎えの馬車に乗って招待状に書かれた別荘へと向かっていた。

今日が招待状に書かれた日である。

王家の別荘はエマリカ王国南部海岸沿いにあるらしい。

走っている内に馬車の窓から見える景色は煉瓦作りの建物が建ち並ぶヨーロッパ調から一変。

南国っぽい木の葉っぱが見え始めた。南国風景をごてごて金ぴかヨーロッパ風の馬車が走るという何ともいえないアンバランスさ。

でもそんな些細なことは潮の香りがしたところでどうでもよくなった。

ざざぁぁぁん、ざざぁぁぁん。

ミーテが馬車の窓を内側に開けてから身を乗り出す。

「わあ、海だ!」

ミーテが此方を振り返ると、ミーテの目はとてもキラキラと輝いていた。

「トマトも見て!」

ミーテに持ち上げられた俺の視界にエメラルドグリーンの海が表れた。

「ワン!ワン!ワン!ワン!」(う、海だああああああああああ‼)

「トマト、凄い尻尾振ってるね。」

これが喜ばずに要られるか。

俺は人生で始めて本物の海を見たんだ。

大袈裟に聞こえるかもしれないが、実を言うと海水浴なんぞ現世にいたときでさえ行ったことが無い。

いやぁ、やっぱ実物の海は良いもんだな‼

写真とは迫力が違いすぎる。独特の潮の匂い、波の音。光を受けて止めなく変わる波の白いところ。


馬車はやがて浜辺から少し離れた崖に建つお屋敷の前に着いた。

え、まさかこれが王家の別荘!?

てっきりコテージみたいなのを想像していたんだが。

広い庭には芝生と大きな実を3つ程つけた背の高い木が植えられている。ヤシの木?

お屋敷の方は赤い煉瓦の屋根を白い柱達が支えている。

外壁は白い。

赤い両開きの扉が開かれ、初老の執事が出迎えてくれた。

「ようこそお越しくださいました。ヘッセン伯爵家令嬢ミーテ様、そして魔動物のトマト様。」

まさかの俺にも様付けか!?

俺達はお屋敷の中へと案内された。

ここで三泊四日過ごす事になるんだな。


中は外の暑さに比べてひんやりしていた。

ミーテはつば広帽子を取った。すかさず初老の執事がそれを受けとる。

因みに今日のミーテの服は普段着用のワンピース風ドレスだ。色は地味めな薄いベージュ色。今回の色はジオルドが選んだ。それでもおとなしめで可憐な美少女に見えるのだから不思議だ。今回は別荘でのバカンスなので公式用ドレスである必要はないとのお達しだそうだ。それでもコルセットはしないといけないのでミーテが熱中症にならいか心配だったが幸いこのお屋敷は幾分か涼しそうだ。


先ず目に入ったのはマーブル模様の大理石の床だった。艶々した床はひんやりしていて、足の裏に心地よい。

視線を少し上げると、内側の壁はクリーム色で、幾つもの直径二メートル程の丸い窓が並んでおり、全て開け放たれていた。薄手の青いカーテンがそれぞれの丸窓の右側に白いタッセルで寄せられており、微かに揺れている。丸窓から風が入ってきているのが分かった。

木製の階段を上ると、同じように丸窓が並んでいる廊下。そして、初老の執事は廊下の突き当たりの部屋へと俺達を案内した。

扉を開けると、まるで現世で見たテレビに出てくる高給ホテルのスイートルームの様な部屋が広がっていた。

家具のどれもごてごてしておらず、落ち着いたハニー色のテーブルや椅子、棚等が整然と並んでいた。

パステルカラーで描かれた海的な絵画が幾つか壁に飾られている。だが、壁で一番目立つのは廊下の窓よりも一回り大きい丸窓。

その窓から見えるオーシャンビュー!

白い砂浜の横にエメラルドグリーンの海がどこまでも広がっている。

「ワン!」(海近いなぁ。)

馬車から見たときよりもずっと近い。海直ぐじゃないか!

閉まっている硝子窓をぽふぽふと前足で軽く叩く。

「トマトは始めて海を見るもんね。」

後ろを振り向くとミーテが微笑ましいものを見るように此方を見ていた。

タタタタタッ と隣の部屋から足音がした。

「ミーテ!」

「ミネルバ! 先に来ていたのね!?」

明るい黄緑色の普段着用ドレスを着たミネルバが現れた。

「ええ、早く来すぎてしまって。あ、私達3人一緒の部屋なのよ!」

「そうなのね! 道理で異様に部屋が広いと思った。3人ということはイスカも?」

「そうなの! 一人だと心細かったけど3人一緒の部屋なら安心だわ。」

あ、そうなんだ。友達一緒か。枕投げ出来るといいな。

ミーテとミネルバは喋りながら別の部屋へと移動した。

ベッドが二メートル間隔で3つ並んでいるベッドルームが表れた。

普通ホテルだったらスーツケースの荷ほどきが始まるところだが、荷物は既にこの別荘に送っているためその必要はない。

ミーテが近くのクローゼットを開けると既に送ったドレスが並んでいた。

コツコツ、靴の足音が聞こえた。

ミーテとミネルバは顔を見合わせる。そしてニコッと笑った。

どうやらイスカも着いたようだ。

二人はソロリ、ソロリと部屋の扉へ向かう。

そして

「わ!」

「わあ!」

「!?」

イスカはいきなりベッドルームから飛び出してきた二人に驚き目を丸くした。

「ビックリした~。もう来てたんだ。二人共。」

イスカは赤い普段着用ドレスを着ている。

「ふふふ、私達同じ部屋なのよ!」

ミーテが嬉しそうに先ほどのミネルバの様に言った。

「そうなの!? やったー!」

ガッツポーズをとるイスカ。そしてふと思い出したように呟いた。

「そういえば、エドワード王子はどちらに? ご挨拶しないと。」

「あ、忘れてた。」

「ちょっと~。ミーテ、忘れてちゃ駄目でしょ~。」

「あ、さっきの執事の方がエドワード王子や生徒会の方々は後からいらっしゃるから部屋で寛いでお待ち下さい、と言ってたわ。」

「へえ、そうなんだ、、、え!?」

「生徒会の方々も来られるの?」

「そうみたい。」

マジかー。生徒会も来るのか~。


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