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ミーテ視点 藪から棒に展開が

ミーテ視点


眠たさの余り、先生の話を殆ど聞いていなかったから、まさか後ろに彼が座るなんて思ってもみなかった。

一瞬思考停止に陥りかけたけど、バレていないかな。


ルイス・ニューキャッスル

ふわふわの緑がかった金髪の巻き毛に、翡翠色の瞳をした癒し系美少年。

出来の良過ぎる兄チャールズがおり、父親から冷たくあしらわれ心に深い傷を負っている。

花や動物を愛するピュアな性格だが人見知りでなかなか他人と馴染めない。同じく人見知りで転校生の主人公と話していくうちに、徐々に胸の内を話してくれて、何かルイスにしてあげるたびに「あ、ありがとう。」って言ってキュンッとするような可愛い笑顔を浮かべる。

その、はにかみながら照れた顔に私はいつも、手をグーにして悶えていた。

入学式1か月後に学園に顔をだしたから友達の輪に入りづらかったのかもしれない。だからよく一人で庭にいたのかな?

優しくて本当に虫も殺さないふわふわしたタイプだろう。だけども、軟禁バットエンドに協力しているのだから油断は禁物。

なるべく他の攻略対象のように接したくはなかったけど、案内役を指名されてしまった。

私が寝ていたのが悪かったのかもしれない。先生の目に留まるような行為だったから。

サッと案内をして、穏便に終われたら良いのだけど。



授業終わり、私はルイスを案内しようと振り替えると、既に数人の女の子に囲まれていた。

「これからどうぞ宜しくね。ルイス様。」

「ニューキャッスル公爵様といえば陛下の弟君で魔法兵の総司令官でいらっしゃいますわよね?」

「ご病気だったとお聞きしましたけど、どういったご病気でしたの?」

「あ、いや、その、、、。」

いっぺんに質問を浴びせられてすっかり萎縮している。

ここで話しかけるか否か。

話しかけてフラグがたってしまっても困るけど、先生に頼まれた以上案内しないわけにもいかない。

そうだ!

「あの、皆で一緒にルイス様を案内しませんか?」

私はルイスを囲む女の子達にまず声をかけた。

「それもそうですわ。」

「ルイス様行きましょう!」

ルイスは数人の女子生徒に押されぎみに立たされ、歩きだした。

「ミネルバ、イスカ、一緒に行かない?」

「行きましょう。」

「行く行くぅ!」

更にミネルバとイスカも誘う。

キャッキャ、キャッキャと話している女の子達に取り囲まれながら歩いているルイスの後ろを、私とミネルバとイスカはついてく。

トマトもトコトコと私に着いてきた。

これで直接ルイスと話すこともない。女子生徒達が先に話す筈。

あとはこのまま案内で食堂と実習室と保健室まで行ったかどうか確認をするだけ。

なんだけど、、、なんだか彼女達を利用しているようで、申し訳ない。

でも、今はフラグを立てないように細心の注意をはらいたい。

「ルイス様、彼方が保健室。そしてこれから行くところが食堂となってますの。」

「そうだわ、ルイス様。今丁度お昼休みですし、ご一緒にランチでもいかが?」

「まぁ! 素敵ですわ。是非行きましょう!」

「えっと、あ、その。」

ルイス、スッゴい押されてる。そのまま食堂に行くのか。できれば実習室を見せてから行って欲しかったけど。

「実習室も見て欲しいけど。」

ボソッと小声で呟くと、横のミネルバがう~んと首を傾ける。

「今話しかけるのはマズイかも。」

横でイスカが欠伸をした。

「あ~。確かにね。あの子達の邪魔しても悪いし。私達もお昼にしよっか。」

「そうね。そうしましょう。」

食堂に向かった後、私とミネルバとイスカはルイス達とは別の席に着いた。

メニューを開き、何を食べるか考えていると。

「ごきげんよう。ミーテさん。」

後ろから呼ばれた。

この声は、エドワード王子の婚約者のベレニケ様だ。

慌てて立ち上がろうとしたらベレニケ様にぽんっと肩に手を置かれて止められた。

「そのままで結構ですわ。今日は貴女方にプレゼントを持ってきましたの。」

おかしい。あのお茶会の後殆ど話してもいないのに。

ベレニケ様は後ろを振り替えると、取り巻きの一人に渡すように指示を出した。

なんだろう?

嫌な予感しかない。

渡されたのは厚手の白い封筒に、深い紅色の封蝋が押されたものだ。封蝋にはダリアの花を横から見た形が浮き上がっている。ヘッセン家にいた頃、家庭教師から習った、エマリカ王家の紋章だ。

更に封筒はミネルバとイスカにも渡された。

「それでは、ごきげんよう。」

ベレニケ様は黄色の巻き巻きカールな髪を翻して颯爽と食堂から出ていった。

「えっと、、、。」

一瞬自分が今どういう状況なのか分からなくなった。

「開けてみよう!」

イスカが嬉しそうに貰った封蝋を割って中から1枚の厚手の紙を取り出した。

私とミネルバもそれに倣う。

中には招待状が入っていた。

差出人はエドワード王子。

内容は7月に王室の別荘へ招待する、というものだ。

ダリアの紋章の判子が押されている。


この招待状を見たことがある。

私がまだ転生する前。

【過去に囚われた Heavenly Maiden】でエドワード王子ルートをやっていた時、海辺の別荘に招待されるというイベントの前に渡させる物だ。

「う、、、、。」

嘘。声が乾いて無くなってしまった。

今日まで色々あったけど、どれもこれもゲームには無いイベントだった。ここにきて急にゲーム正規のイベントが発生するなんて。

一体どうして?

「クーン。」

足元を見ると、トマトが心配そうにこちらを見上げていた。

手を伸ばしてトマトのふわふわとした毛並みをポフポフと撫でてやる。

イスカが声を落としてだがワクワク感を滲ませていった。

「ミーテ、やったじゃない! 王子に凄く気に入られているじゃん。」

その横でミネルバの顔が緊張で青くなる。

「お、王室の別荘だなんて。どどどどどどうしよう!」

「ミネルバったら、大丈夫よ! 」

「イスカはどうしてそんなに平気なの?」

「そりゃあ、不安よりもワクワクの方が勝ってるからかな。」

イスカは凄く楽しそうだ。

「ミーテ?」

ふと、ミネルバが此方を見た。

「大丈夫? 顔色が悪いけど。」

私は掠れた喉から声を絞り出した。

「ぁ、うん。大丈夫。」

王室の招待を断る選択肢はこの世界に無い。断るとはすなわち反逆。

否定の言葉さえ発してはいけないのだ。

それにしても本当に不思議だ。何故こんな招待状が来たのだろう。

私はまた何か間違えてしまったのだろうか。




でも、まだフラグが立っただけ。

イベントが発生しただけ。

このイベントをゲームとは違うシナリオにしてしまえば良いんだ。

これから起こるであろう【海で溺れて助けられるイベント】とか、【海辺の洞窟探検イベント】とかを回避すれば、、、。

そうだ! まだ希望はある!

ここで、諦めてたまるか!

あ、あとトマトを連れていこう!

トマトの効果でシナリオに変化が起きるかもしれない。

対策とか、立てなきゃ。

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