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羚羊のミーテ

こんな天使みたいな顔して生臭いとおっしゃった。


いや、まあ川流れてきたから生臭いよ。確かに俺は生臭い、、、。


てっきり「子犬さん、大丈夫?」とか言ってくれる感じの容姿をしていたから。


その口からまさかの生臭いなんて言葉が出るとは、驚いたよ。


そして、今気付いたけどめちゃめちゃ寒くて、めちゃめちゃ痛い。


自分の体を見ると打撲のあとだらけだった。川の石やら枝やらにぶつかっていたのだろう。


少女は岸辺の近くの焚き火の前に大きめの葉を敷いてそこに俺を置いてくれた。


焚き火の近くでは串に刺さった魚が焼かれていた。


「クーン」(暖かくて魚臭い。)


「ちょっと待っててね。今、治癒するから。」


と少女は言ってくれた。


あ、ありがとうございます!やったー!


少女は薬指を突き出し俺の体にあてた。


目を閉じ

「レオナレオナレオナレオナ」

と繰り返し唱え始める。


途端に何か温かいものが体に流れ込んできた。


体を見ると打撲の後が徐々に薄まり痛みが引いてきている。

!?


「よし、もう大丈夫。動ける?」


「クンッ?」(今のなんだ?)


俺は前足だけ立ち上がった。まだ後ろ足は立つことはできなかった。


「そっか、まだ子犬だものね。後ろ足がまだ立てないってことは生後2週間くらいかな。」


少女は思案するように頬に手を置き小首をかしげた。


可愛い。


グ~~~~


俺の腹が鳴った。


「治癒魔法を使うとお腹がすくんだった。急いで食べさせなきゃ!」


少女は左腕に俺と網を、右腕に焼かれた魚の串三本と釣った魚を入れたバケツを抱えて走り出した。



辺りの景色は緑の森が広がっており少女が走る度に空からの木漏れ日が目に入りチカチカしていた。


少女はリアルカモシカのように斜面をかけ上がっていく。


大きな2~3㍍の岩が前にあれば軽やかな跳躍でひとっ飛び、木の根の広がる場所も足が引っ掛かることなく走り抜けていく。


暫くすると森のなかに一軒の家が見えてきた。


丸太を積み上げたこれぞザ・ログハウスな家だ。煙突から煙が出ている。


「ただいま!お父さん。」


家の扉を開けると右手に大きな暖炉があった。


大きな鍋が吊るされ中で白い液体が煮込まれている。


側で鍋の中をかき混ぜていた銀髪に灰色の瞳の30代くらいの男性がこちらを見た。


「お帰りなさい、ミーテ。魚は捕れたかい?」


「ええ。いっぱい捕れたわ。お父さん、山羊のミルクまだ余ってる? 」


「さっきチーズを作る為に幾分か使ったけど、どれくらいいるんだい? 」


「コップ二杯分ほど」


「なら全然大丈夫だよ。」


ミーテの父親はミーテの腕の中の俺を見て


「あぁ、そういうことか。」


と言って木のお椀に山羊のミルクを注いだ。


俺は床に下ろされた。


ミーテの父親が木のお椀を目の前に置いてくれる。


空腹で死にそうだった俺はありがたく山羊のミルクを頂いた。


今日だけで色々あった。いっぱいありすぎて疲れてしまった。


満腹になった途端に緊張の糸が切れ、俺はその場で丸くなって眠ってしまった。


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