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俺を縛るよく分からない感情

「ガウッ。」(何となく貴様からは魔動物としての貫禄的なものが一切感じられなかったから変だとは思っていんだ。)

ああ、だからシーザーは俺にいきなり魔動物か? って聞いたのか。てか貫禄ってなんだよ。

「ガウッ。」(貴様はどうやって魔法を使うんだ?)

「ワン。」(視界の右端に文字が見えて、それに視線を合わせると発動するんです。)

「ゴォォ。」(そもそもあなたは人間の文字が読めるのね。誰から習ったの?)

「ワン。」(あ、え~と。俺、実は生まれ変わる前が人間で、その頃の記憶が残っていて。)

「ガウッ?」(真実を言っているのか?)

「ワン。」(マジです。)

「ゴォ?」(頭は正常?)

「ワン。」(正常ですよ!)

言わなきゃよかった。信じてもらえるわけ無いよな。

「ガウッ?」(もしも前世が人間なら、貴様はどうして今ここにいるんだ?)

「ワン。」(そりゃあ、ミーテが俺の飼い主だから。)

「ガウッ。」(なんだ。貴様もこのサニーと同じで飼い主がいないと餌も獲れん軟弱者か。)

「ワン!」(軟弱者って何ですか! だったらあなたはどうしてここにいるんですか?)

「ガウッ。」(俺は、、、仲間を殺すと言われてここにいるだけだ。)

「ワン?」(ど、どういうこと?)

「ガウッガウガウッ。」(知らんのか貴様は。魔動物の殆どは餌付けされたか、俺のように無理矢理連れてこられたかのどちらかだ。俺は昔、魔法が使えたから一番強かったし、仲間の傷も癒すことができたから山で狼の群れを束ねていた。

あるとき人間どもに俺が魔法を使える狼だと知れ渡ってしまってな。

捕まえようとわらわら人間どもが山に入ってきおった。だが俺は魔法を使えたし、山の地形を奴等よりも把握しているから逃げることは容易かった。

そしたら奴等、どうしたと思う?)

「ワン?」(仲間を捕まえた?)

「ガウッ。」(そうだ。奴等は山を半分焼いて残り半分に逃げてきた俺達を捕まえた。そしたらあの男の親が現れた。)

シーザーはエドワード王子を見た。エドワード王子の親ってことは今の国王か。

「ガウッ。」(打開策だと言って、これ以上山を破壊せず、仲間も殺さない代わりに言うことを聞くように言ってきた。魔動物は大抵人間の言うことがわかるからな。結果俺は今こうしてそいつの言われた通りに息子の側にいる。)

そ、そうだったのか。悲惨だな。

「ワン。」(無理矢理だったんですね。)

「ゴォォ。」(私はむしろ救われたと思ってるよ。この白い体で仲間からはみごにされてね。魔法を使ったら余計に気味悪がられたよ。それに制御が下手だったから傷つけちゃったりしてね。餌も上手く獲れなくて飢えて死にそうな所をこの人に助けられたの。)

サニーは赤い目でベレニケを見た。

「ガウッ。」(餌付けだな。)

「ゴォォ。」(食うに困らないし、世話してくれるし、いいことずくめよ。あなたもそうよね。)

キョロッと目が動き此方を見据えた。ワニの目ってなんか感情が読めなくて怖いな。

「ワン。」(俺は、ミーテに助けられて、、、あれ?)

恩を感じで今までミーテに着いていってたのか?

俺は恩で動くような人間だったか?

恩ではない気がする。違うな。俺はそんな良い人間じゃない。さっきもミハエル先生の財布で好きに食いまくった。目先の欲にあっさりと飲まれる俺が恩なんて感じるわけがない。

じゃあ、利点があるからか?

確かにミーテがいなきゃ俺は飯が食えない。

だが利点で動いていたにしては、感情がおかしい。

ミーテが悲しめば俺は落ち着かないし、ミーテが喜べば俺も嬉しかったりする。

じゃあ、恋慕か?

確かに始めはミーテの容姿にときめいたかもしれない。だけどミーテにはジョナサンがいると知ったとき、俺の片想いは終わった。

それに俺はいつまでも片想いを貫けるほど純粋ではない。

恋慕も今はちょっと違う気がする。

じゃあ、なぜ俺はミーテと一緒にいるんだ?

別に自由にしてもいい筈だよな?

だけど何かが引っ掛かっている。

これは多分もっと古くて暗い感情だ。何かはまだ分からないけど、でもただひとつ言えることは。

「ワン 。」(俺はミーテに幸せになってもらいたい。だからミーテと一緒にいる、と思う。)

「ガウッ?」(なぜだ?)

「ワン。」(分からない。)

「ゴォォォ?」(分からないの?)

「ワン。」(ああ、何故か分からないんだ。)

「ガウッ。」(曖昧なやつだな。まぁ、分からないなら仕方がない。)

ガタン

王子が椅子から立ち上がった。

ベレニケとミーテも立ち上がる。

「さて、そろそろ次の授業が始まります。参りましょう。ミーテ、今日は君と話せて良かった。仮面の下の顔もとても美しいですね。実に目の保養になりました。」

うわぁ~。正しく乙女ゲームの様なセリフだなぁ。流石エドワード王子だ。

てか何話していたのか聞いていなかった。

「身に余る御言葉、恐悦至極に存じます。」

ミーテは深々と礼をした。いつになく敬語を並べ奉っている。

乙女ゲームとかなら赤くなって「えと、あ、そんな!」とか上擦った声で言うだろうが、相手は王子だもんな。

これ位丁寧な方が良いのだろう。

「ふふ、貴女は相変わらず堅いですわね。でも確りと礼節を弁えていらっしゃる。ヘッセン伯爵家は礼儀正しい家柄なのでしょう。」

ベレニケのこの一言に俺はピンっと来た。

ま、まさかこの学園での行いはそのままその家の評価に繋がるのか?

道理でジオルドはスパルタで礼儀作法を叩き込んだわけだ。

あ、じゃあ、窓からのジャンプはヤバイよな。でも今ベレニケは礼儀正しい家って評価したし、チャラってことかな。

もしかして、ベレニケはミーテを庇うために?

そうか、魔動物がバレたのは問題無いとしても窓からのジャンプは問題だよな。緊急事態ではあったが。

ベレニケが食堂でミーテに声を掛けたとき、窓からは危ない。だが、魔動物を大切にするのは良いことって話しかけたのは周りにミーテの行動の正当性をアピールするためなのかもしれない。

俺の憶測でしかないがな。


「あ、トマト。どうしよう。」

ミーテは俺を見て、困った表情を浮かべた。

「でしたら、連れて行く方がよろしくってよ。一度は隠そうとした。それで貴女が謙虚な事は十分周りに伝わっている筈ですわ。

それに、この様な小型犬は烏に襲われてしまいますわ。昔私も子猫を飼っていたのですけど烏に連れていかれてしまいましたの。」

「懐かしいね。とても白くて美しい猫だった。」

エドワード王子もうんうん、と頷いた。

「そうですね。連れていこうと思います。ベレニケ様、色々と教えていただき有難う御座います。トマトも他の魔動物達と知り合うことが出来てとても幸せに感じていると思います。」

「ふふ、私のサニーもエドワード様のシーザーもいつになく楽しそうでしたわ。」

「そうだね。私のシーザーがこんなに話すのも久しぶりかもしれない。ミーテとはまた会いたいな。」

「勿体無き御言葉です。」

ミーテはまたもや礼をした。

何となく、ミーテは拒否りたい感がある気がする。

まあ、ジョナサンがいるし、王子にはあまり気に入られたくないのだろう。だけど毛嫌いされてもお家に響く。

瀬戸際かな。

サニーもシーザーも中庭に居るそうだ。

エドワード王子はベレニケを連れて教室へと向かった。

俺はミーテに続いて教室へと戻った。

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