これがほんとの三途の川ってか
川の音が聞こえてきた。
もう、なんなんだよ!
なにも川に捨てなくてもいいじゃないか。
せめてミカン箱に入れてその辺の路地においときゃいいじゃないか!
普通わざわざ川まで行くか?
何考えてんだ、あのオッサン!
ガキに恐怖でも植え付けたいのか?
餌付けしちゃった罰にしちゃあ、やりすぎだろ‼
てか、どうすればいい?
木の箱は古いせいか角に隙間が空いている。
絶対沈む!
まだ立つことはおろか泳ぐことも出来ないのに。
溺れて死ぬのか、俺、また死ぬのか?
周りの兄弟達は
「クンックンッ(恐いよ恐いよ)」
「ク~ン(お母さん)」
と心配そうに鳴いている。
あれ?
俺犬語わかる!?
って今はそんな事感心してる場合じゃない!
ガタンッ
箱が持ち上げられた。
ルイスは箱を抱え川辺に近づき川に箱を浮かせた。でもまだ箱から手を離さない。
頼む!
川はやめてくれ!
ぶっちゃけ川辺に置いてくれよ!
「坊っちゃん、、、。」
「ごめんね。僕はあの時どうしたら良かったのかな。そのまま見殺しにすれば良かったのかな。兄様なら、、、そうするのかな。、、、僕が、、、あの時見殺しにしとけば君たちは産まれなくて、こんな辛い目に合わせずにすんだのかな?」
ルイスの目には止めどなく涙が溢れていた。
「坊っちゃん、旦那様は坊っちゃんに学んで欲しいのだと思いますよ。今回で餌付け3回目。2回は私が路地裏に連れていきましたが今回ばかりは本当に旦那様は許さないでしょう。二度と同じ事を繰り返さないためにもその手を離してください。」
マジかよ!
餌付け後を考えろよ!
つーか3回目!?
ルイスは手を離した。
ギャーーーーー‼
やりやがったクソガキィィィィィィ!
離しやがった。
箱は川に流された。
川の流れは速く、箱は突き出た岩にぶつかり、砕けた。
俺は砕けた箱の木片にしがみついた‼
どんどん流されていく。木片は縦に長くしがみつきやすかった。
必死にしがみ付く。何度も顔に水を被り息が苦しい。手(前足)が疲れてきた。
なぜ俺はこんなに生きようとしてるんだ?生きたいのか?
なんで生きようと努力してんだ?
死んだら楽になるんじゃないか?
前足が痛い。めちゃめちゃ痛い。でも離したら、、、楽に、、、。
いやいやいや苦しいに決まってるじゃん‼
今でもこんなに苦しいのに死ぬときもっと苦しいだろ‼
嫌に決まってるだろ。俺は臆病なんだよ!死にたくない!
その時目の前に岩ぶつかった。
俺は手を離してしまった。
浮力を失った俺は水中に引きずり込まれた。
ヒュン!
バサッ!
頭上で音がした。俺は何かに絡みつかれ、それが網であることに気付いた。
爪が網に引っ掛かり、勢いよく網は引っ張られ岸に上げられる。
「あれ? 何んだろう。」
透き通るような声が聞こえた。
俺は網から取り出され、持ち上げられた。
目を開けると天使がいた。
いや天使じゃなくて天使の如く美しい少女が目の前にいた 。
桜の花びらを思わせるピンク色の瞳。襟足までの長さの雪の様に白い髪。
色白で可憐な美少女がそこにいた。
そして俺に顔をよせ、一言
「生臭い。」
と言った。