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ブルタレス伯爵家のお茶会へ参る

お茶会の日がやって来た。


朝食後に、ミーテとエリザベスは身支度を整えにいく。


そして、俺は洗われる。

洗われ終わった俺がミーテの部屋で待っていると、ドレスを着たミーテが隣の部屋から現れた。


白銀の髪がリボンによってアップになっている。


まだ肩までの長さしかないはずだが、よく結い上げることができたな。


頭の上に薄桃色のミニハットがちょこんと乗っている。

ドレスの地も同じく薄桃色で白い薔薇の柄と薄水色レースが付いている。

ドレスの形は後ろの腰だけが膨らんでいた。

全体的に淡い色合いがミーテの儚い容姿を引き立てている。


まるで妖精のようだ。


「トマト、行きますよ。」


そう言えば、ここんとこミーテの口調が変わってきたな。

俺とミーテは廊下に出て階段を下りる。

玄関に出ると、エリザベスとジオルドが既に待っていた。


エリザベスのドレスの形も腰の後ろが膨らんでいる。頭には色違いの黄緑色のミニハットを被り、若草色の生地に白い薔薇の柄のドレスを着ている。


「では、ミーテさん参りましょうか。」


「はい、お母様。」


エリザベス、ミーテ、俺の3人は馬車に乗り込んだ。


「いってらっしゃい。楽しんでおいで。」


ジオルドが馬車の外から言った。


パカラッパカラッパカラッ

規則正しく馬の蹄の音が聞こえる。


そう言えば、俺は毎日外へ出してもらっているが、ミーテはおよそ1か月ぶりの外なんじゃないか?

きっと嬉しいだろうなぁ。


そう思って見上げると、ミーテの顔は青ざめていた。


エリザベスが心配げな顔になる。


「ミーテさん、そんなに緊張なさらないで。大丈夫だから。」


「はい、だ、大丈夫です。確りとブルタレス伯爵家についての知識は頭に入っております。それに、食事の礼儀作法もバッチリの筈です。教師の方々には大丈夫だと言われました。そう、いつものように。教えられた通りに。できれば。あ、でももし記憶が飛んでしまったら。震えたりして、ナイフを落としてしまったら。ああ! 」


「そうだわ! 深呼吸しましょう! 深呼吸! さあ、吸って~。」


ミーテはエリザベスに合わせて深呼吸をした。


スーハースーハー。


「大分落ち着くことができました。有難う御座います。」


よかった、よかった。


俺は馬車の窓から町を眺めることにした。

窓に映っている俺の後ろのミーテも景色を見ているようだ。

今日は快晴だ。


あ! いつか見た時計塔発見。


馬車は暫く走り、やがて広い川に差し掛かった。


「この川がヘブ川ですか? 」


窓から景色を眺めていたミーテがエリザベスの方を向いた。

「ええ。この川を越えたところからが、ブルタレス伯爵領になりますわ。」


ふーん。

じゃあもうすぐか。

ブルタレス伯爵領の景色もヘッセン伯爵領の景色もあまり違いが無いな。

あるとしたら、ブルタレス伯爵領には時計搭が見あたらない位かな。


馬車のスピードが下がってきた。

それと共に前方に門とお屋敷が見えてきた。

門を潜り抜け、お屋敷に馬車が向かう。

お屋敷の前で馬車が止まった。


屋敷から執事が出てくる。


「さあ、着きましたわ。」


馬車の扉が開いた。

先ずはエリザベスが馬車から降りた。次にミーテが降りる。そして最後に俺が続いた。


ブルタレス伯爵家のお屋敷は赤い煉瓦で造られている。

執事に促されて玄関を抜けると、右の扉に案内された。

扉を開けると、今度は硝子の扉が現れた。透けて見える色は緑色。


硝子の扉を開けてもらうと、そこは温室だった。

右には紫や白色の蘭がずらりと並んで咲いている。

硝子の天井には緑と白の斑模様の葉がまるでカーテンの様に生えている。


左には、、、なんだろ。

多分、蔓科の植物だよな?


百合の様に肉厚な白い花弁が向日葵の様に開いている。花の中央には先が紫で真ん中が白い針の様なものが花火の様に開き、更に濃い紫の葯が3つある。

まるで、時計の様な花だ。


他にも蔓科の植物はあったが、まだ花は咲いていない。

温室の中には大きな丸いテーブルがあり、オレンジ色のテーブルクロスが敷かれている。


テーブルの真ん中には銀の皿があり、彩りの良いサンドイッチが盛り付けられている。

他には銀のティースタンドが3つ、それぞれケーキやスコーン、クッキー等のお菓子が入っている。


陶器のポットやティーカップも並び、実に美味しそうな光景だ。


テーブルの傍にはドレスを着たご婦人方が3人いる。

あと、ミーテと同い年位の女の子が1人いた。


「エリザベス、久しぶりね! 」


黄色がかった薄い赤色のドレスの人が此方を向いた。


「久しぶり、アン! 」


エリザベスは嬉しそうにその人の方に向かった。

薄い青紫色のドレスの婦人が此方を向いた。


「本当に久しぶりよ、エリザベス。心配していたんだから。体調はもう大丈夫なの? 」


「ごめんなさい。イザベラ。もう大丈夫よ! 」


オレンジ色のドレスの婦人が微笑んだ。


「それで、エリザベス。その子が手紙で言っていた子かしら? 」


「そうよ、ジョージアナ。この子が遠縁から養女にもらったミーテなの。」


遠縁から? そうか。人前では平民からとは言わないんだな。


「初めまして、ブルタレス伯爵婦人。ミーテ・ヘッセンでごさいます。」


ミーテは膝を曲げてお辞儀をした。


「まあ、可愛らしいお嬢さんだこと。あら? そちらの犬が魔動物? 」


ジョージアナは俺を見て目を丸くしている。

他のご婦人方も俺を見た。


「へー。これが魔動物。あら、目がオッドアイだわ。」


「本当だわ。やっばり魔動物は他の動物と少し違うのね。」


俺はご婦人方に取り囲まれてしまった。

ジョージアナが輪に入って言った。


「さて、エリザベスも揃ったところだし、始めましょう。今日は楽しんで行ってね、ミーテさん。」


「はい。」


ご婦人方は席に座った。

ミーテも席に座る。

俺はミーテの近くの床にお座りをした。

ミーテの右にはエリザベスが、左には同い年っぽいあの栗毛色の髪の女の子が座った。


随分オドオドとした女の子だな。黄色いドレスを着ているが、ずっと俯いている。

ミーテの方がずっとしっかりしているな?


いや、そんな事もないか。何故ならテーブルの下でミーテの手がブルブルと震えている。


エリザベスやご婦人方はお喋りを始めた。


ミーテと女の子は黙ったままだ。

暫くすると、ミーテは隣の女の子の方を向いた。


「あ、あの、初めまして。私はミーテ・ヘッセンと言います。貴女はブルタレス伯爵令嬢のミネルバ様でしょうか? 」


「あ、はい。そ、そうです。」


「ど、どうぞよろしくお願いします。」


「こ、こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」


堅い。

二人とも自己紹介が余りにも堅い。

会社の自己紹介じゃあるまいし、もっとフランクに行こうぜー。

その後二人はまた、俯く。


ああああーもーーー!

見ていて、イライラする。

じれったいな!

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