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寿司詰めスケジュール

部屋で待っている俺にメイドのメリッサは、魔動物用ビスケットと書かれた袋を持ってきてくれた。


「魔動物用の餌ってこれでいいのかしら?」


俺に訊かれても、、、。


白い犬用の皿に魔動物用のビスケットが入っている。


頂きます。


ガリガリと噛んでみる。


ふむ、悪くない。

噛みごたえはあるが、正直言うと、山での捕れたての魚の方が旨かった。


食べ終えるとメイドが皿を持って部屋から出ていく。

俺は一匹で部屋に残された。


暇だ。


ソファに飛び乗ってみる。ソファから部屋を見渡すと、壁に幾つもの絵が掛けられていた。全部ピンク色の枠に入っている。ただし、俺の目の前の枠には、地図が入っていた。


地図によれば、中央の大きい国はエマリカ王国。東に同じ位大きいシロリア王国。北西にはとても小さいイスス共和国がある。


そういえば、このエマリカにはメリーカボチャは無いようだ。町にも家にもカボチャツリーは無かった。話題にも上がらない。

前の家は何処だろう?

イススかシロリアだよな?


考えていると、ガチャリと音がして、昼食を終えたミーテが帰って来た。

手に分厚い紙束を持っている。


「ワン! 」(ミーテおかえり! )


ミーテは力無く

「ただいま、トマト。」

と答え、俺の隣に座った。


な、何があったんだ?


ミーテは書類を、ソファの近くのテーブルに置いて1枚ずつ読んでいく。

隣から覗き込んで見た。


それは、3ヶ月分、つまりエマリカ学園に入るまでののスケジュールだった。

起床時間から食事の時間、家庭教師の来る時間、就寝時間等がびっしりと書かれている。

例えばある一日では、

06:00起床

07:00朝食

08:00食事のマナー

09:00歴史の授業

10:00会話のマナー

11:00仕草のマナー

12:00服のマナー

13:00昼食

14:00英語の授業

15:00ピアノのレッスン

16:00ヴァイオリンのレッスン

17:00歌のレッスン

18:00夕食

19:00~22:00ダンスのレッスン

23:00就寝


まあ、貴族の令嬢になれば忙しいのは当たり前。だけど、幾らなんでもこれは寿司詰め過ぎるだろ。


「トマト、聞いてくれる? 」


「ワン? 」(この寿司詰めスケジュールの事か? )


「ジオルドおじ様は良い人よ。でもエリザベス様はどうしたらいいの? 食事中ずっと睨んでくるし、かといってそっちを見ると、顔を背けるし、何か所作を間違えると平民は、平民は、って言われるし、トマト、私、どうしたらいい? 」


「ワン! 」(ここを出て自給自足のサバイバル生活に戻ろう! )


「そうよね、私が悪いんだわ。私がここでの教養を身につければ問題は無いよね。」


前向きだな。でもこのスケジュールこなすのは、ちょっと辛いんじゃないか?

あ、ヤバイ。ミーテの目が、やるぞ! って言ってる。


「やるわ! やってやろうじゃない! 」


ミーテは拳を天井につきだした。


元気になってくれるのは良いが、無理すんなよ~。



3週間後



今、俺はお屋敷の庭を走り回っている。

俺への待遇は頗る良かった。1日に1回は庭に出してくれるし、食事もちゃんと貰える。体も毎日洗って貰える。


山での生活に比べれば手入れの行き届いた芝生は、雑草の生い茂る野原よりも物足りないが絨毯よりはましだろう。

魔動物用の餌は毎日味が異なり、意外と飽きが来ない。魔動物用の餌を食べると蓄魔が約3時間後100%になる。


問題は、ミーテだ。


俺は庭からミーテのいる窓を見上げた。

ミーテは今、家庭教師にみっちりと知識を叩き込まれている。間違えれば鞭で掌を叩かれるというスパルタ式だ。

この3週間、ミーテはよく頑張ってると思う。朝から晩まで食事と寝る時間以外ほとんどの時間が様々な礼儀作法やダンスのレッスン等にあてられている。


食事の時はエリザベスからの嫌がらせを受けているから、心休まるのは寝る時位だろう。だが復習をするために寝る時間も削っているから就寝は毎日夜の12時以降になってしまっている。


最近は食事の礼儀作法をマスターしたので、エリザベスから平民とは言われなくなったとミーテが喜んでいた。だが無視や睨みはまだ続いているらしい。

それに対して文句の1つも言わずに健気に頑張っている。


多分ミーテは色々と心に抱え込むタイプだろう。


こういう他人に頼らず自分一人で頑張ろうとする人ほど前世の俺みたいな詐欺師とかに引っ掛かりやすいんだよなぁ。


さて、ミーテは今多大なストレスを抱え込んでいる。発散する時間は殆ど無い。

だが人間とはいつまでもストレスを溜め込めるほど強くはない。

何処かでストレスを発散したがるものだ。


結果、ミーテは夢遊病を発症してしまった。

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